森達也(映画監督、作家)


 この原稿を書いている現在の日付は8月20日午前9時20分。場所は沖縄那覇市栄町のホテルの一室だ。

『FAKE』公開初日の舞台挨拶のため、那覇空港に着いたのは一昨日の夜。上映館である桜坂劇場支配人の下地久美子と居酒屋で軽くオリオンビールと泡盛を飲んでから(初めて食べるイカスミの雑炊がおいしかった)、仮眠をとって2時半に起床。3時にホテルまで迎えに来てくれたのは、三上千恵監督のドキュメンタリー映画『戦場ぬ止み』の助監督で撮影も担当した桃原(モモハラではなくトウバルと読む)英樹と桜坂劇場スタッフの水野詩子。映画第一作『標的の村』で高江を撮った三上監督は、第三作の重要なエリアとして、現在は再び高江を撮っている。
ゲート前は多くの反対者で埋め尽くされた(筆者撮影)
ゲート前は多くの反対者で埋め尽くされた(筆者撮影)
 とここまでを書いたところで、読者は「高江」を知っているだろうかと気になった。読みはタカエ。恥を覚悟で白状するが、7月の段階で僕は知らなかった。というか忘れていた。「舞台挨拶の前に高江に行きませんか」と『FAKE』プロデューサーの木下繁樹に電話で言われたとき、「高江ってどこですか?」と思わず訊き返して絶句させてしまった。さすがに「ヘリパッド問題で住民たちが…」と説明されかけて、『標的の村』の主要な舞台になった地域だと思いだした。