香田洋二(元自衛艦隊司令官)

中国に対する国際社会の厳しい反応


 2015年5月21日、米CNNテレビは南シナ海上空を飛行する米海軍P8哨戒機に同乗取材して中国によるサンゴ礁(環礁)埋め立ての様子を放映し、全世界の注目を集めた。これは9日後、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)における米国防長官による埋め立て即時中止要求と中国人民解放軍参謀副総長の強固な反論の応酬へと続き、米中関係緊張に発展した。また6月8日の主要7カ国首脳会議(G7サミット)首脳宣言には「威嚇、強制又は武力の行使、大規模な埋立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」という文言が盛り込まれ、本件に対する国際社会の厳しい反応を中国に突き付けた。

 報道によると、南シナ海・南沙諸島(スプラトリー諸島)の環礁7カ所で中国による埋め立てが行われている。最初に埋め立ての事実を公表したフィリピン政府の資料写真からは、遅くとも2013年後期に埋め立てが開始されたと推察される。中国はその後約2年間にわたり環礁の埋め立てをひそかに進めてきたが、今次報道を契機にその活動が明らかになった。
南シナ海のスプラトリーで警備する中国人民解放軍の海軍兵士(新華社=共同)
南シナ海のスプラトリーで警備する中国人民解放軍の海軍兵士(新華社=共同)
 中国は近年、南シナ海中央部を覆う「九段線」を持ち出して、その海域の全ての島々の領有権を含む独占的な権利を主張している。

 第2次世界大戦後、同海北部の西沙諸島(パラセル諸島)は南ベトナムと中国が領有権を争ったが、ベトナム戦争末期、1974年の両国交戦の結果、南ベトナムが駆逐され中国が実効支配を確立した。

 その後の南北ベトナム統一を経て、西沙諸島はるか南方にある南沙諸島では、1988年の越中軍事衝突の結果、中国が一部の岩礁や岩を手にした。これらは高潮時には水没するなど、国連海洋法条約(UNCLOS)では領海などの基点とならないものであった。しかし以前は活用可能な2万平方メートル以上の地積を有する南沙諸島内の13島全てをベトナム(越)、フィリピン(比)、台湾(台)、マレーシア(馬)が実効支配し、同海域での活動拠点を全く保有していなかった中国が小なりとはいえ岩や岩礁を獲得して、同諸島への侵出の足掛かりを得た意味は大きかった。

 同時に、同諸島で軍事拠点を有しない中国にとって、本格的な「島」の獲得は最優先事項であった。ただ、越、比、台、馬が実効支配し小規模ながら滑走路も有する南沙主要4島に対する軍事侵攻は乱暴すぎる上、国連安保理常任理事国の行動としても受け入れられないことは明白である。そこで中国が採った次善の策が、巧妙な主張で自らの正当性を主張できる環礁の埋め立てであった。