もし承認の順番が違ったら、薬価はもっと安かった~オプジーボの光と影(1)



川口恭(ロハス・メディカル編集発行人)
(医療ガバナンス学会 2016年4月15日)
 免疫チェックポイント阻害剤のニボルマブ(商品名・オプジーボ)が、昨年12月、既に承認されていた「根治切除不能な悪性黒色腫」に続き、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」にも使用が承認されました。

 どの程度の効果があるかという説明は、MRICメルマガでは割愛します。

 肺がんでは2014年の時点で年間約7万3千人が亡くなっており、非小細胞肺がんはその8割強を占めますから約6万人です。その方々に希望の火を灯すことになります。さらに作用機序から、他の多くのがんにも効果があると考えられており、既に腎細胞がんとホジキンリンパ腫に関しては適応拡大の申請がされています。今後も恩恵に浴することのできる患者は増えていくことでしょう。

 このように極めて画期的な素晴らしい薬であるということと同時に、100mgで約73万円、20mgの小瓶は約15万円という薬価の高さも大変な注目を集めています。

 その用法用量は、最初に悪性黒色腫のセカンドライン用として承認されたのは体重1kgあたり2mgを3週に1回だったのが、肺がんでの承認を機に体重1kgあたり3mgを2週間に1回投与と、期間あたりの投与量が2.25倍になる使い方も認められました。悪性黒色腫のファーストラインと肺がんの場合、量が多い方の使い方になります。仮に体重60kgの人だと1回180mgということになり約133万円。投与できなくなるまでは続けるという想定なので、1年間続けると52週26回投与で3500万円弱になります。健康保険の高額療養費制度があるため、自己負担は最高(高額所得者)でも約200万円、よって年3300万円以上は保険者の負担となります。

 困ったことに、現時点では効くであろう人と効かないであろう人を事前に見分ける方法が見つかっていません。しかも効いているのか効いていないのかも何カ月か様子を見ないと分かりません。さらに、もし効いていた場合に、やめるとどうなるのかもよく分かりません。

 このため、何の制限も加えなければ、先ほど説明した年6万人の全員が投与対象となる可能性があり、その人たちの平均投与期間が半年あったとすれば、その健康保険の負担分だけで約1兆円と国民皆保険制度を揺るがす金額になります。

 もちろん万策尽きた患者全員に投与するわけはありませんし、使用量を抑制するような様々な関門も設けられてはいるのですが、その関門が必ずしも医学的な妥当性だけから設けられているとは言えないため、医療不信を増幅しそうなのです。詳しくは次回説明します。