榊原英資(青山学院大学特別招聘教授) 

 米国司法省が住宅担保ローンに絡む不正販売をめぐってドイツ銀行に対して140億米ドルの支払いを求めたことがきっかけになってドイツ銀行の経営危機説が市場を揺さぶっている。

 ドイツ銀行の負債総額は260兆円に達するといわれている。2008年に破綻したリーマン・ブラザーズの4倍に近い額だ。もしドイツ銀行が破綻すればリーマン・ショックの再来ではすまない規模のショックが世界経済を襲うと噂されている。

 ちなみにリーマン・ショックを受け、2008年アメリカの経済成長率はマイナス0.29%に下落し、2009年にはマイナス2.78%まで下がっている。全世界が影響を受け、日本も2008年にはマイナス1.04%、2009年にはマイナス5.53%まで落ち込んでいる。ヨーロッパも同様で、ドイツは2008年0.81%、2009年マイナス5.57%、フランスも2008年0.20%、2009年マイナス2.94%まで成長率を落している。

フランクフルトにあるドイツ銀行本社ビル
フランクフルトにあるドイツ銀行本社ビル
 もしドイツ銀行が破綻すれば2008~09年を上回る大不況が世界経済にやってくると懸念されているのだ。ドイツのメルケル首相は「(ドイツ銀行を)救済しない」と言明しており、ドイツ銀行の株価はこの1年下落し続けている。2015年10月30ユーロだったのが1年で半分以下に、2016年10月には13ユーロ前後まで落ち込んでいる。大幅下落と小幅反発を繰り返しながらの下落で典型的な下落トレンドが続いていており、1桁ユーロの株価がつく可能性もあるといわれている。

 ドイツ銀行の株価の下落は世界的な銀行株の下落をもたらしており、日本でも三菱UFJフィナンシャル・グループの株価は2015年10月の800円前後から、ここ1年で500円前後まで下落、みずほフィナンシャルグループの株価も1年前の250円前後から170円前後にまで下がってきている。

 経済成長率もドイツは2015年1.45%、2016年も1.45%と予測されている。フランスは2015年1.14%、2016年1.14%、イタリアは2015年0.76%、2016年0.95%と大陸ヨーロッパ諸国は1%前後の成長率だ。アメリカ・イギリスは2%を超えるなど、今のところ順調に推移しているが、アメリカ・イギリスにも次第に翳りが出始めている。