塚崎公義(久留米大学商学部教授)


 株価が軟調に推移していて、16日の東京市場も大幅な下落となりました。「株価も下がっているし、景気は悪いんだろう」などと心配している人も多いかもしれません。株価は景気の先行指標と言われていますが、景気は悪くなるのでしょうか?今回は、景気と株価の関係について考えてみましょう。

株価は内閣府の景気先行指数の計算に使われている

 景気先行指数を発表している内閣府は、指数を計算する際に、株価の動きも利用しています。ということは、内閣府も「株価が動くと、その後から景気が動く場合が多い」と認めているのでしょう。それは、筆者も認めるところです。

 株式市場の投資家が、景気が悪化すると予想し、その予想が当たったとします。投資家たちは直ちに株を売るので直ちに株価が下がりますが、景気が悪化するのはその後ですから、株価の動きが景気に先行した事になります。つまり、投資家たちの景気予想が5割以上の確率で当たるならば、株価は景気の先行指標となり得る、というわけです。

世界的な株安を受け、前週末比895円15銭安となった日経平均株価終値を示す電光掲示板=5月24日、東京都中央区(小野淳一撮影)
世界的な株安を受け、前週末比895円15銭安となった日経平均株価終値を示す電光掲示板=5月24日、東京都中央区(小野淳一撮影)
 日銀が金融を思い切って引き締めたとします。金利は高騰し、株式市場に廻る資金も減りますから、株価は直ちに下落します。一方で、景気は日銀が金融を引き締めてからしばらくして悪化しますから、この場合にも株価は景気の先行指標となり得ます。

 米国でリーマン・ショックのような事件が起きたとき、日本の株価もただちに暴落しますが、日本の景気が悪化するのは米国向けの輸出が激減してからですから、しばらく後になります。この場合にも、株価は景気の先行指標となり得ます。

株価が景気を動かすわけではない

 しかし、ここで重要なことは、株価が景気を動かしているわけではない、ということです。せいぜい、大量の株を持っている富裕層が贅沢を控えるようになるとか、株価の下落を見て「景気が悪くなりそうだ」と考えた庶民が少しだけ倹約する、といった程度でしょう。日本は家計の株式保有が少ないので、株価が下がっても実損を被る人は多くないはずで、景気への影響も小さいはずです。

 株価が景気より先に動く場合でも、因果関係として景気が原因であったり(投資家が景気を予想)、他に原因があったり(日銀の引き締めやリーマン・ショックなど)するのです。

 もしも株価が景気を動かしているのであれば、景気を予想する時には株価をしっかり見ておく必要があるのですが、景気予測の専門家の中で、株価に注目している人は決して多くないと思われます。