河合雅司・産経新聞論説委員

 2040(平成52)年には、東京を含む全ての都道府県で人口が減り、4割以上減る自治体が全体の22.9%に及ぶ。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が2010年の国勢調査に基づいて予測した「地域別将来推計人口」は、日本の厳しい未来図を改めて描き出した。

 全国的に人口が減るとはいえ東京圏への集中は続き、南関東が占める人口割合は27.8%から30.1%へと増大する。一方、最も落ち込みが激しいのは秋田県の35.6%減。青森県は32.1%、高知県は29.8%減る。

 市町村別にみると、変化はさらに顕著だ。群馬県南牧村に至っては71.0%の減少である。ここまで住民が減少したのでは、自治体の運営に支障が出るどころか、「消滅」の危機である。

 こうした数字を見る限り、「大都市部への人口集中と地方の過疎化が加速する」との印象を受ける。しかし、ここには大きな“常識のウソ”が潜んでいる。社人研は、大都市部の自治体における「過疎」も予測しているのだ。

東京23区にも過疎地

 東京を例に挙げると、青梅市(25.3%減)や福生市(24.2%減)といった都心への交通アクセスが不便な自治体が激減するだけでなく、区部の足立区(21.3%減)、葛飾区(19.2%減)、杉並区(15.5%減)も軒並み下落率ランキングの上位に顔を並べた。逆に、東京23区で人口が大きく増えるところもある。中央区(14.4%増)や江東区(8.5%増)だ。

 こうした現象は、地方の大都市の間でも見られる。同じ福岡県の政令指定都市であっても、北九州市が19.7%も減るのに、福岡市は1.7%減にとどまる。

 年齢別の増減まで比較すると、高齢者が大きく増える自治体、勤労世代が激減する自治体など事情はそれぞれ異なるのだ。こうした事情を考慮せず、「大都市部と地方」という単純な発想で対策を考えたのでは成果は上がらない。

大都市で高齢者激増

 人口問題をめぐる“常識のウソ”は、これにとどまらない。社人研の推計では2040年の65歳以上の割合は、人口減少と同じく秋田県の43.8%を筆頭として青森県、高知県が続く。これだけを見ると、「過疎地で高齢化が進む」と考えたくなる。だが、65歳以上人口の実数がどれだけ増えるかに着目すると全く異なる結果となる。

 東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知など7都県は1.4倍以上に膨れあがるが、秋田、高知、島根県は減る。市町村では半減や3分の1近くまで減るところもある。

 これらは、既に高齢化し尽くして高齢者人口は増えようもないということだ。若者がそれ以上に減るため、高齢化率は高水準に見えているのである。

 医療や介護のニーズが、高齢化率よりも高齢者数によって決まることを考えれば、高齢者対策に追われるのは地方ではなく、大都市部であることが分かる。大都市部の自治体は、若者中心で効率性優先の街づくりから発想転換しなければ通用しまい。

「多死時代」が到来へ

 これは「高齢化率の上昇」と「高齢者数の増加」を混同することで生じた誤解だ。それは3つ目の“常識のウソ”とも結びつく。「高齢者数はどんどん増える」という思い込みだ。

 社人研の推計によれば、高齢者人口のピークは2042年の3878万人である。同じ高齢者でも年齢によって分かれる。65~74歳は2016年の1761万人が頂点であり、当面増えるのは75歳以上だ。高齢者全体が増えるわけではない。

 高齢者施設を造るにしても、計画性を持たなければいずれ過剰になる。大きな病気になりやすくなる75歳以上が増えれば、終末期の患者も増加するだろう。本当にどういう施設が必要なのか、よく考えることが求められよう。

 死亡数増大にもつながる。2040年は現在より40万人多い167万人だ。これまで、あまり話題にならなかったが、日本は本格的な「多死時代」も迎えるのである。

 病院のベッドに空きがなくなり「病院死」が当たり前ではなくなれば、社会の関心は「どこで亡くなるか」に集まるだろう。火葬場や墓地の不足への対応に追われることも考えておかねばならない。

 “常識のウソ”にとらわれていたのでは対応が後手に回る。われわれは一歩も二歩も先を読んで、地域の事情に即した戦略を練らなければならない。