子供の才能は「家庭で育てる」が基本


編集部:日本にはさまざまな音楽教室が展開していますが、その多くは教室で講師と1対1になり、教則本を進めていくという方法が採られています。私が通っていた大手音楽教室もそうでした。スズキ・メソードの場合は、どのようなレッスン方法を採用しているんでしょうか?

早 野:特徴の1つは、保護者、おもにお母さんにレッスンに随いてきてもらうということでしょうか。一緒にレッスンを受けたお母さんは、家に帰ってお子さんのレッスンを見る‘先生’になる。親子で練習を進めておき、また1週間後に講師のレッスンを受けます。

 鈴木先生は、「子供は家庭で育つ」ということを、常に言っておられました。子供にとっての環境の大部分は家庭にあり、まずは家庭で、母語のように音楽を繰り返し聴き、弾き、聴き、弾く。音楽教室は、その基礎の上にあってこそ成り立つ場所です。

 レッスン時間の最初は、よい演奏を聴くことから始まります。お父さんお母さんの母語を覚えるように、子供が自然に「あんな風に弾いてみたい」と思うことが大切で、子供自身が「うまく弾けた」と思うことができれば、達成した喜びで次のステップへ進むことができるでしょう。これが鈴木先生の仰る「母語教育法」です。

 スズキの教則本の第一番は音階練習ではありません。誰でも知っている「きらきら星」です。これを耳で覚えた子供がまず曲を弾いてみて、先生や親が聴く。親だけではなく、ほかの生徒が一緒に聴いている場合だってあります。また子供が弾く、の繰り返し。楽譜を見ないで弾けるようになったら、次の曲に行くんです。ときどき、同じ曲に戻ることもありますよ。でもそうやって何度も何度も同じ練習を繰り返すので、時間が経ってもその曲を弾くことができるんです。

 僕はこの前50年ぶりにヴァイオリンを持たされて弾いてみたら、当時の練習曲が何とか弾けたんです。自分でもびっくりしました(笑)。

編集部:たとえ半世紀前であっても、一度習得したことはなかなか忘れないということですね。鈴木先生も「生まれて来る子供たちは初めから文化的な存在ではないが、文化の高い生活態度をもった家庭で育てれば、その子供は立派な教養を身につけた、文化人となりましょう」と仰っています。