藤本貴之(東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者)


 フリーアナウンサー・長谷川豊氏によるブログ舌禍騒動は、期せずしてネットメディアと既存メディアの関係性の現在を考える上で、最良のケーススタディとなった。

 テレビのように、一定の制約を受けている既存メディアに対して、今のところ法規制や業界内規制を持たないネットメディア(個人・法人問わず)には、高い自由度がある。また、作り手を見ても、素人と玄人の線引きも曖昧で、一定の権威と権力を持つ既存メディアが正面切って相手にはしづらい、という雰囲気もある。

テレビ大阪の報道番組「ニュース リアル KANSAI」の 金曜メーンキャスターを降板した長谷川豊氏(右)
 そのような状況が、かつての「深夜放送のようなトンがり」を生み出す一方で、過剰な表現であっても抑止どころか、牽制もできない現状に、規制下におかれたテレビタレントや既存メディア業界が歯がゆい思いをしてきたことも事実である。

 その意味では、ネットメディアでの表現が引き金となって、ネット内での批判的盛り上がりから「炎上」し、リアル社会にまで影響を及ぼし、当事者(長谷川氏)のテレビ番組レギュラーの全降板にまで至らせた今回の騒動。これには単なる「舌禍事件」では収まらない意味がある。

 少なくとも、これまで野放図だと思われていたネットメディア/ネット民全体に対して、「ネットだと思って好き勝手やっていると、リアル社会でも制裁を喰らうぞ」という牽制にはなったことは間違いない。今回の騒動を契機として、ネットメディアに対する既存のメディアの接し方も変化してゆくはずだ。

 この問題を通して考えさせられることは、ネットメディアの現在の立ち位置が果たしてどのようなものであるのか、ということだ。近年、ネットメディアが急激に影響力を伸ばしているとはいえ、それでもなお、既存メディアが持つ規模感や信頼性とは明確な格差がある。そこで本稿では、ネットメディアの現在の立ち位置について、既存メディアとの対比から考えてみたい。