中宮崇(サヨクウォッチャー)

 かつて、NHKの戦争関連番組は素晴らしかった。中でも1992年から1993年まで6回のシリーズで放映された「ドキュメント太平洋戦争」は、その最高峰と言える。(Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E6%88%A6%E4%BA%89

 当時まだ大学生であった私は、放映のたびにそのオープニング曲「漣歌」を聞いただけで胸が熱くなり涙が止めどなく流れ出てきたものだ。
飢えと病気で次々と倒れ、歩ける者だけが生き残った「インパール作戦」の敗走路=タイ・ミャンマー国境付近(井上朝義氏撮影)
飢えと病気で次々と倒れ、歩ける者だけが生き残った「インパール作戦」の敗走路=タイ・ミャンマー国境付近(井上朝義氏撮影)
 第1集の「大日本帝国のアキレス腱 〜太平洋シーレーン作戦〜」からして、太平洋戦争中に海上護衛総司令部に勤務され名著「海上護衛戦」(角川文庫)の著者としても知られる大井篤氏が登場する力の入れようで、その後も

第2集「敵を知らず己を知らず 〜ガダルカナル〜」

第3集「エレクトロニクスが戦を制す〜マリアナ・サイパン〜」

第4集「責任なき戦場 〜ビルマ・インパール〜」

第5集「踏みにじられた南の島 〜レイテ・フィリピン〜」

第6集「一億玉砕への道 〜日ソ終戦工作〜」

と、タイトルを見ただけで泣かされる、質の高い放送が続いた。

 あまりにも評判が良かったためか、1993年に角川書店で書籍化された後もシリーズ名を「NHK取材班 編『太平洋戦争 日本の敗因』」と変え文庫化され、現在も全6巻が発売中である。

 どの集も名作揃いであったが、ここでは特に第4集「責任なき戦場 〜ビルマ・インパール〜」を取り上げたい。

 これは1944年に行われた「インパール作戦」の失敗の要因を批判的に検証した回である。悪化した戦局の挽回を狙い、インドの都市インパールを攻略するという野心的と言うよりもむしろ無謀極まりないこの作戦は、戦死だけで2万6千人もの犠牲者を出した挙句、参加した三個師団の師団長全員が無謀な命令に反対し、司令官の牟田口廉也の逆鱗に触れ、作戦途中に解任されるという極めて異常な様相を見せたことでも知られている。

 番組では、作戦失敗の責任者である牟田口に対する日本陸軍による責任追及が極めて不十分であったことが詳細に検証される。その「無責任体質」はただこのインパール作戦に限ったことではなく、戦争中のあらゆる場面で見受けられたものであり、それが太平洋戦争敗戦の重大な要因の一つであったと結論する。

 そればかりではない。この番組は、そうした軍部の「無責任体質」が敗戦後の日本の官僚機構、企業等あらゆるところで未だ続いており、それが日本の将来を危うくしていると示唆して終わる。