新井克弥(関東学院大学文学部教授)

 四面楚歌に陥っている子育て環境。これは「どげんかせんといかん」(東国原英夫)状況である。言いかえれば、家族をきちんと成立させるためのセーフティネットを要しなければならない。だが、それは家族の中だけで解決できる問題では決してない。周辺の協力、そして家族の構成員が家族から出でて、周辺とのコミュニケーション、関わり合いを持たなければ不可能な問題だ。ではどうするか。これには、いろいろと面白い仕掛けが出現し始めているので、これを最後に紹介しておこう。

 一つは、よく知られたことばだが「公園デビュー」である。小さな子どもを抱えた母親たちが公園に集まり、子どもをメディアにコミュニケーション空間を形成する。これは、もっともわかりやすいセイフティネットといえる。一人で身も知らぬ人間の中に入り込むのはちょっと精神的にキツい。しかし、子どもを連れていれば、これが記号となって、後援で集まっているママさんたちが呼び止めてくれる、というわけだ。
写真はイメージ
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 この母親たちは「子育て」という共通のジレンマを抱えている。そこで、お互いが子育てをテーマにして議論し合う(その間子どもたちは公園の中で遊んでいるというわけだ)。子どもネタ中心だが、もちろん子どものことだけをネタとしなくてもいい。近くのケーキ屋さんやテレビネタでもかまわない。そうやって関わっていく中で、子育て技術お互いに交換しあうとともに、仲間としてのコミュニケーション空間を形成していく。つまり、子どもをダシに、友達を作っていく。こうなると母親は寂しくないし、子どもへのストレス解消、子どもに対する対処法の学習も可能となるわけだ。というわけで「公園デビュー」は家族、そして子育てのためにきわめて重要なチャンスなのである。

 ところが、話はこんなに簡単ではない。公園デビューですらおっくうだという親も多いからだ。公園の母親たちは凶暴そう。しかもしがらみができてうざったい。こんな風に考えている親も多い、というかかなりいるらしい。こうなると「公園」はセイフティネットとしては機能しない。別のセイフティネットが必要だ。これを用意するNPOが最近は結構存在する。