ところが、韓国ではそうした可能性がまったく考慮されることもなく、真偽不明の報道がなされ、炎上がエスカレート。10月4日には大手日刊紙・朝鮮日報が「『市場ずし』が韓国人の客だけにわさびを大量に入れていた」「従業員同士が韓国人を指す蔑称を言いながら嘲笑していた」などと報じたが、何とネタ元はネット上の書き込み。さらに、道頓堀で韓国人観光客が暴行を受けたとか、南海電鉄が外国人に差別的な車内放送を行っていたとか、阪急バスがバスのチケットの氏名欄に韓国人を侮蔑する表現を書き込んだとかいう類似の事例も「韓国人差別」「外国人差別」として報道され、結局のところ、現在は「大阪は嫌韓感情が激しくて危険だ」「大阪への旅行は避けるべきだ」という論調が大勢になっている。

 ここまでが、日本でもある程度知られている顛末。しかし、その奥はさらに深い。問題の「わさびテロ」の書き込みは韓国のポータルサイト「NAVER」の旅行掲示板(正確には「日本旅行同好会」というカテゴリー)に書き込まれたもの、というのが日本での「定説」になっている。それは事実であるが、実は書き込みが行われたのは今年の5月なのである。また、書き込みが行われた当時には、まったく問題にはならなかった。書き込みが行われた後にも、「市場ずし」は韓国人に評判のいい店で通っていたし、「親切だった」という書き込みも多かったのである。そもそも「市場ずし」が今回、韓国で騒がれたのは、この店がそれなりに「親切でおいしい店」として韓国で有名だったからである。

 「わさびテロ」が本格的に話題になったのは「イルベ」(正式名称は「日刊ベスト貯蔵所」)というネット掲示板で、この書き込みが大々的に取り上げられてからである。「ネット掲示板」は日本の「2ちゃんねる」のような電子掲示板であるが、韓国のネット空間ではこうした「ネット掲示板」が大手ポータルサイトとともに大きな影響力を持っている。「イルベ」は韓国人ネトウヨが多く集う「極右掲示板」として知られ、ネット上でもリアル空間でも様々な物議を醸したことでも有名である。この掲示板は「極右」でありながら、反日の度合いはあまり高くないという点が特異だったが、最近、管理者が交代したことによって反日性が強くなり、「わさびテロ」のような話題が炎上する下地ができあがっていた。こうしたネット上のネタは過去のものでも、取り上げ方次第では「祭り(インターネットの掲示板で、特定の事象が激しく攻撃され、盛り上がること)」になりやすい。実際に「わさびテロ」や「阪急バスのチケット問題」も、5月に書き込まれた「事件」なのに、「祭り」になっている。