中田宏(元横浜市長)


 大阪の寿司店が、ワサビ多めの寿司を提供したと話題になっています。
 かなりの量を入れて外国人に対する嫌がらせをした、差別意識があったのではないかと社会的なニュースとして伝わっています。
 この寿司店は「差別的な意図は全く無い」「ワサビを多めにしてくれと言われることが多かったからそうした」と否定しており、真相は分かりません。

 このニュースが流れたあとに横浜のある馴染みの寿司屋に行ってこの話題になった時に、店の大将は「ワサビがきいていない。もっと追加してくれという要望は実際にある」と言っていました。

 真相が分からないなかネットで評判になっているのが、国土交通省総合政策局観光事業課が出している『多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル』です。


 そのなかには“中国人に対して良いおもてなしをするための推奨事項”があり、次のように言及しています。

 ・多くの分量と品数を提供し、料理に豪華な雰囲気を持たせることが、なによりも大切である。
 ・バイキング形式やお代わり自由など、自分が食べたい分量を食べたいだけ食べられるようにすると喜ばれる。
 ・刺身を食べる中国人には、練りワサビをたっぷりと提供する方がよい(1回の食事で1 本の練りワサビを使い切る人もいる)

 しかもこのマニュアルのサブタイトルは~外国人のお客様に日本での食事を楽しんでもらうために~となっていて、“楽しんでもらうためにはワサビをたっぷり入れろ”と書いてあるのです。
 そういう意味でも大阪の寿司屋に悪意があったかどうかは分かりません。

 ワサビをてんこ盛りにして食べるのがいいかどうかは日本人として考えるところがあります。
 日本のお寿司や刺身にてんこ盛りのワサビを載せて辛さを楽しむのは日本のお寿司とは言えないという気持ちもあります。
 日本人はワサビに“辛さ”だけではなく“香り”を求めますが、中国人だけではなく外国人はわさびに“辛さ”を求めるところがあるのでしょうか。
 外国人を喜ばす“インバウンド”中心の店はそれでも良いですが、一方で「てんこ盛りワサビを提供することはできない」「香りを味わう形でお寿司を食べて欲しい」という店舗があっても良いですし、あって欲しいと思います。
 そのような店は、例えば「当店は日本の伝統の寿司を提供しております。ワサビも魚に合った適量の提供になりますのでご賛同頂けるお客様のみお越し頂きますようお願い申し上げます」と出したらどうでしょうか。
 人種の差別ではなく、提供方法の差別を図れば良いのではないでしょうか。

(2016年10月12日「中田宏公式WEBサイト」より転載)