田中俊英(一般社団法人officeドーナツトーク代表)


「ディラン愛」を語ってしまう


 ボブ・ディランは変わったカリスマアーティストで、ディラン好きの人々のそれぞれの「ディラン愛」を聞いているだけでも、聞かされるほうは元気になってくる。たとえばこの、みうらじゅん氏へのインタビュー(【インタビュー】みうらじゅん ディランは「フォークの神様」でなく「ロック」)などもその一例で、ディランをいつもながら熱く語るうち、みうら氏も明るくなってくるし読んでる僕も元気になってくる。
イラストレーターで作家のみうらじゅんさん
イラストレーターで作家のみうらじゅんさん
 たとえば僕の高校時代にAくんという僕以上の変人の友人がいて、高校を出て大学受験に3浪したあと大学生となり、そこからインド旅行に備えて僕が当時住んでいた京都市左京区の下宿に何ヶ月か居候していたのだが、インド資金を貯めるためにアルバイトしていた京阪電車地下工事(当時まだ京阪は地上を走っていた)仕事がつらくて、バイトから帰っていつもディランを歌っていた。

 みうら氏インタビューにもある『血の轍』から、名曲「ブルーにこんがらがって」を、ギターをかきむしりつつタングル・アッピン・ブルー! とか叫びながら、「ディラン愛」を語る。

 あのジョン・レノンも名曲「ゴッド」のなかで、思わず「ジンマーマン(ディラン本名)を信じない」と最後に叫んだりするのだが、肝心のボブ・ディランはいつも彼を叫んだり語ったりする人の前から通り過ぎていて、宗教3部作等の怪作をどんどん出していく。

 そんなボブ・ディランのふるまいやありようが、その他大勢のカリスマアーティストとは違って、肩透かしというよりは「永遠の存在」のような雰囲気でディランを意識するものたち(みうら氏やAくんやジョン等、世界中何億人の人々。僕も)の記憶に積み上がっている。