碓井真史(新潟青陵大学大学院教授)

 強姦致傷の容疑で逮捕されていた高畑裕太氏は、被害者との示談も成立し、不起訴処分となり釈放されました。釈放時の仰々しい謝罪の仕方が芝居がかっているとか、集まったマスコミ人をにらみつけているように見えるなど、様々な報道がされています。
会見冒頭、頭を下げる高畑淳子さん=8月26日、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
会見冒頭、頭を下げる高畑淳子さん=8月26日、東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
 これで、裁判が開かれることはなくなり、事実が裁判で明らかにされることもなくなりました。高畑裕太氏が今何を感じているのかも、わかりません。

 ただ、一般的に性犯罪者は反省することが難しく、再犯率も高いとされています。なぜ、性犯罪者は反省しにくいのでしょう。

強姦か同意か


 強姦は、暴行や脅迫による性器の挿入ですが、性交自体は同意なら犯罪ではありません。ただ、この「同意」がよくわかりません。ある犯罪者は、女性をどんなに脅し、殴っても、最後に女性が「はい」と言えばそれは同意だと本気で思っていました。彼の最初の性体験は、強姦でした。

 法的には、加害者が同意だと思い込んでいただけなら罪に問えるでしょうが、多くの人が同意と思っても無理はないとなれば、強姦罪が成立するかどうかは微妙でしょう。

 さらに性犯罪者の多くは、認知がゆがんでいます。普通の人なら、たとえ女性がはっきり「ノー」と言っていない時でも、拒絶しているとわかるのに、彼らにはわからないことがあります。女性が苦しんでいたり、恐怖を感じていても、彼らは共感することが難しいのです。

「同意だと思った」というのは、嘘であり裁判での言い訳という場合もありますが、誤解して思い込んでいる場合もあるのです。

これでは、なかなか反省できないでしょう。

共感されにくい性犯罪被害


 ある女性が、尊敬する男性の別荘に行った。男性は女性にキスを迫る。女性は拒むのだが、拒みきれずキスされ、さらにホテルに誘われる。もしもこのような出来事があれば、どうでしょうか。

 たとえどのような関係の男女がどこにいても、同意なしの性的行為は許されません。けれども、世間ではなかなか納得しない人もいるでしょう。別荘に行った女性が悪い、キスぐらいで騒ぐなという人もいるでしょう。

 性犯罪は、刑法上は軽いわいせつ行為でも、被害者は人生が左右されるほどに深く傷つくこともあります。しかし、体の怪我や金銭被害に比べて、心の傷はわかりにくいのです。

 見知らぬ人からの行為で傷つこともあれば、身近な人による行為で傷つくこともあります。交際中の男性に無理やりセックスさせられる「デートレイプ」で深く傷つく女性たちもたくさんいます。

 わいせつ行為ではなく強姦ですら、乱暴な男性の中には、「減るものじゃなし」などという人もいます。強姦は、魂の殺人とさえ言われているのにです。

 女性が強姦される恐怖は、男性が去勢される恐怖だと言う人もいます。男性が、誰かに男根を切断された時に、女性たちが「そんなものなくても生きていける」などと語ったらどうでしょうか。

 加害者自身の共感性が弱く、世間の被害者への共感も低いなら、加害者が反省できなくても不思議ではありません。