安保理の緊急会合に先立ち、国連の潘基文事務総長は8月中旬にエイズ対策や新型インフルエンザ対策でも活躍した公衆衛生専門家のデビッド・ナバロ博士(英国)を「エボラ出血熱に関する国連システム上級調整官」に任命し、国際社会が今回のエボラの流行封じ込めに一致して取り組む体制の構築に乗り出している。UN News Center(国連ニュースセンター)がそのナバロ博士に対して行った8月20日付のインタビューの報告が国連広報センターの公式サイトに日本語仮訳で掲載されている。
UN Photo/Mark Garten
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《この人に聞く:エボラ出血熱に関する国連システム調整官、デビッド・ナバロ博士》

 全文は国連広報センターのサイトでご覧いただくとして、ここではその一部を紹介しよう。ナバロ博士はエボラウイルスの感染について次のように語っている。

 『WHOでは、医療従事者が適切な治療を行いつつ自らの感染を予防することができるよう、特別な措置を講じています。エボラウイルスは感染力が強いため、これは困難な課題です。しかし適切な予防措置をとれば、感染は起こりません。わかっているのは、ウイルスが体液を介してヒトからヒトへと伝播するということです。つまり、例えばおう吐物や排泄物、おそらく唾液でもウイルスが伝播するということです。つまり、感染者の体液との接触を防ぐことができれば、感染することはありません』

 感染の拡大防止のためには、感染した人の移動を制限し、隔離して医療を提供する必要がある。ただし、9月18日の安保理決議でも改めて強調されることになるのだが、「エボラ感染国への渡航、および感染国からの渡航は低リスク」であり、渡航制限を感染拡大の防止策として正当化することはできない。むしろ各国の支援を妨げ、対策は一層、困難になる。
 『明言させていただきたいのは、現在エボラ出血熱の集団感染が起きている国々への渡航を制限する正当な理由はないということです。現時点で重要なのは、感染者との密接な接触、具体的には感染者との直接的な接触を避けるということです。つまり、感染者を特定し、彼らが他の人々と接触することがないようにするということです。しかしこれは、感染国への渡航を何らかの形で全面的に制限するということを意味するものではありません』

 今回のエボラの流行は大都市にまで広がり、かつて経験したことのない規模に拡大してしまった。ただし、未知の病原体に遭遇しているわけではない。1976年のザイール(現コンゴ民主共和国)における最初のエボラの流行以来、過去38年間に何度か経験した小規模な地方レベルの流行発生を通し、病原体も感染経路も病気への対応の仕方もかなり明らかになっている。厳しい病気ではあるが、恐るべきことと、過剰に恐れてはならないことを見分けることは可能なのだ。

 「エボラウイルスに付随する偏見や恐怖にかんがみて、生還者の社会への再統合を促すにはどうしたらよいと考えていますか?」というインタビューの最後の質問にナバロ博士はこう答えている。

 『エボラ出血熱と闘っている人々は勇敢な人々です。彼らをサポートしている人々は勇敢な人々です。これは実に並外れた勇気です。エボラ出血熱からの生還者は、大変な勇気を示しただけでなく、非常に大きな潜在力を持った人だと私は思います。ますます多くの生還者が、エボラウイルスに今も感染している他の人々の治療の支援に自主的に携わるようになっています。エボラ出血熱の感染リスクにさらされているコミュニティの“大使”となりつつあります』 

 重大な危機であるとはいえ(あるいは危機であるからこそ)、こうした視点も忘れないようにしたい。