室谷克実(評論家)

ロッテ大混乱、韓進倒産


 こんな問題だらけの財閥統治がいつまで続くのだろうか──。

 いや、続くのだろう。が、国家的打撃になる「崩落現象」は起こる。現に、ここ二、三カ月の間に、無理を重ねた人間の部位が過労から機能停止に陥るように、財閥の綻びが目立ち始めた。 「これはヤバイ!」とは、日本でのサムスン製スマートフォンのCMのセリフだが、新型スマホ「ギャラクシー・ノート7」(=日本では未発売)の爆発事故、本当にヤバそうだ。アメリカの航空当局は、飛行機に乗る際に「ギャラクシー・ノート7」の電源を必ず切るよう、使用者に強く求めている。 
発火して破損したサムスン電子のスマートフォン「ギャラクシーノート7」=10月9日、米バージニア州(ショーン・ミンターさん提供、AP=共同)
発火して破損したサムスン電子のスマートフォン「ギャラクシーノート7」=10月9日、米バージニア州(ショーン・ミンターさん提供、AP=共同)
 サムスンの体質からすれば「被害者への個別補償」で押し通すところなのに、早々と全量リコールに踏み切った。これは、よほどの欠陥があるからではあるまいか。新製品に切り替えたところで、「爆発するサムスンのスマホ」のイメージは長く尾を引くだろう。

 韓国ロッテに対する検察の追及が始まってから随分と時間が経つが、依然としてジワジワと続いている。「前政権で太った財閥はいじめられる」とのジンクスどおりだ。

 実際のところ、納入会社、入居テナントに対するロッテの横暴さ、オーナー一族の傲慢さは、かねて有名だった。まさに常民と奴婢の怨嗟の蓄積が背景にある。

 八八年ソウル五輪の直前、ロッテホテルはスト決行中だった。夜、ホテル入口のアプローチに寝転んだボーイたちの立て看板に面白い字句があった。

「会長様は若い女の上で寝て、俺たちは石の上で寝る」

 その「若い女」こそ、総括会長の現夫人である元ミスコリアだ(日本にいる夫人とは別人)。いまや、相続税逃れの追及対象になっている。

 ただ、検察の最終目標は李明博前大統領だろう。軍用飛行場から緊急発進した戦闘機が衝突しかねない位置に、ロッテは百二十三階建てのビル(第二ロッテワールド)を建設中だ。盧武鉉政権ですら認めなかった建設に、なぜ李明博政権が許可を出したのか。

 ロッテ財閥のナンバー2が事情聴取の直前に自殺したのも、「やはり黒だから……」との一般的心証を強めた。ロッテについては「あれは日本の財閥だ」というのが韓国人の一般的な受け止めだから、同情の声など起きるはずもない。 

 そして、韓進(ハンジン)だ。大韓航空(KAL)が「ナッツ姫事件」以来、思わしくないところへ、韓進海運が事実上、倒産した。

 一応、「韓進海運はグループからは切り離し済み」という形になっているが、それでは“国民情緒法”が許さない。「ナッツ姫のパパ」は私財の一部を供出したが、焼け石に水だ。

 そもそも韓進海運は「ナッツ姫のパパ」の弟が経営していた。その死後、夫人があとを継いだが、海運不況には勝てず、「ナッツ姫のパパ」に経営権を委ねた。

 その夫人は、韓進海運の倒産の前に全持ち株を売り逃げた。彼女が、ロッテの総括会長の姪に当たることは運命のいたずらだろうか。

 公道を「そこのけ、そこのけ」とばかりに闊歩する会長様。財閥の全権を握る彼らが誤った号令を出した時、韓国型財閥はすぐにも沈んでいく。いまは、その模様を眺める絶好の季節なのかもしれない。