辺真一(ジャーナリスト、コリア・レポート編集長)
(Yahoo!個人 2016年11月1日分を転載)
韓国へ帰国した崔順実氏
=10月30日、仁川国際空港
(聯合=共同)
 「韓国版ウォーターゲート事件」を模倣して「崔順実ゲート事件」と呼ばれる朴槿恵大統領にまつわる一大スキャンダルが渦中の人物、崔順実氏が電撃逮捕されたことで急転収拾に向かうのか、それとも、さらにエスカレートするのか重大な局面を迎えている。

 朴槿恵政権が早期収拾、幕引きを図ろうとしているのは明らかだ。何よりも事件の主役である崔順実容疑者が事実上逃亡先のドイツから急転直下帰国し、検察の事情聴取に応じたことがそのことを示している。

 崔容疑者は帰国直前の「世界日報」とのインタビューでは「ドイツに移住するため来た」と長期滞在を示唆していた。また、韓国の検察に召還された場合、帰国する考えはないかとの質問に「今は飛行機に乗れないほど神経が衰弱しており、心臓も悪く、治療を受けている」と語っていた。それが一転、帰国となった。

 ドイツは崔容疑者にとっては1979年から85年まで留学し、住み慣れた言わば「第二の故郷」である。家もあり、成人になったばかりの一人娘もいる。それでも大騒動の中、帰国を決断したのは、窮地に立たされている朴大統領を救う思いがあるのだろう。

 崔容疑者は昨日中央地検に出頭する際に「死ぬほどの罪を犯してしまいました」との言葉を発し、国民に謝罪していた。「死ぬほどの罪」とは一連の容疑への謝罪ではない。

 崔容疑者は前出のインタビューで「大統領は立派な人だ。そんな人に物議をかもすようなことをしてしまって申し訳なく思っている。死にたい気持ちだ」と語っていたところをみると、朴大統領に対して罪を犯したという意味のようだ。この言葉とおりならば、朴大統領を庇うつもりで帰国を決断したといえる。自分が表に出ることで朴大統領への風当たりを少しでも弱めることができると考えているに違いない。

 崔容疑者には▲「ミル文化財団」と「Kスポーツ財団」の不法設立と基金募金疑惑と韓国とドイツで設立した「ザ・ブルーK」など私的な会社への流用疑惑▲青瓦台文書流出疑惑▲娘の不正入学疑惑など様々な疑惑が掛けられている。容疑だけで横領、背任、脱税、外為法違反など10件ぐらいあるとされている。叩けばいくらでも埃が出る。

 検察も逮捕した限り、容疑を固め、起訴に持ち込むだろう。さらに、崔容疑者に関連した人物らを逮捕して事件の早期決着を図る構えだ。その中には出国禁止措置を取った財団の創設に関わった安鍾範・政策調整首席秘書官や大量の内部文書を崔容疑者に提供したとされるチョン・ホソン秘書官ら青瓦台関係者らも含まれるだろう。