佐藤健志(作家・評論家)


 韓国は目下、朴槿恵大統領の長年の親友といわれる女性・崔順実(チェ・スンシル。ただし現在では「チェ・ソウォン」を名乗っているという)氏が、公職についてない民間人であるにもかかわらず、国政に深く介入していたとされる疑惑に大きく揺れている。

 10月25日には、この件に関連して朴大統領が謝罪。10月31日には、検察に出頭した崔順実氏が緊急逮捕されたが、真相究明はこれからとされており、大統領の弾劾や、辞任を求める声まで高まるにいたった。大統領の支持率は日を追って下落、今や10%前後にまで落ち込んだと言われる。
崔順実氏(韓国誌「時事IN」提供・共同)
崔順実氏(韓国誌「時事
IN」提供・共同)

国政介入の問題点は何か

 報道を見るかぎり、崔順実氏をめぐる疑惑の内容は、主として以下の三点にまとめられる。

 (1)自分が関与した二つの財団の理事職に、多数の知人を送り込んだ。また大統領との関係を利用して(あるいは「青瓦台」、つまり大統領府の圧力で)、両財団への出資を財界に求めたうえ、当の資金を私的に流用した可能性もある。
 (2)大統領と親しいというだけで、政府の高官たちと接触、人事や政策に口を出した。
 (3)大統領の演説草稿や閣議資料など、公務に関わる機密文書を入手し、内容について介入した。
(※)娘を名門女子大に不正入学させたという疑惑も持ち上がっているが、これは脇に置くことにしたい。

 事実だとすれば、どれも感心しない話だが、とくに重大なのは(3)だろう。韓国紙「中央日報」日本語版が10月26日付で配信した記事によれば、崔順実氏のパソコンからは、わが国の特使団を含めた内外要人と会見したり、電話で話したりするにあたって、事務方が用意したとおぼしい資料のファイルが多数発見された。

 日本特使団との会見資料には、竹島や慰安婦の問題などに関する対応指針も記されていたと言われる。しかもこれらのファイルが崔氏のパソコンに保存されたのは、会見や通話が行われる前のことだったのだ。

 このような機密性の高い文書(北朝鮮との極秘接触に関するものもあったと報じられている)が、事前の段階で民間人の手に渡ることは、国益に重大な支障を及ぼしかねない。政治や外交、安全保障の専門家でもなく、公職にもついていない崔順実氏が、内容に口出しすることの是非はもとより、かりにファイルが彼女のもとから流出、インターネットを通じて拡散でもされたら、どうするつもりだったのだろうか。

 朴槿恵氏は大統領としての見識を疑われても仕方ないと言わねばなるまい。真偽のほどは不明ながら、崔氏を中心とする民間人のグループが、実質的に朴氏を操っていたという説すら飛び出すにいたっている。