西岡力(東京基督教大学教授)

 韓国政治が大きく揺れている。朴槿恵大統領の古くからの友人である崔順実氏が、民間人でありながら国政の機密文書を入手し、大統領に政策や人事そして服装などについてアドバイスしていたことが暴露されたことがきっかけだ。崔氏が廃棄したタブレットパソコンを入手した中央日報系のニューステレビ局のスクープ報道だった。

ソウル中央地検に出頭し手で顔を覆う、韓国の朴槿恵大統領の親友、崔順実氏(中央)=10月31日(共同)
ソウル中央地検に出頭し手で顔を覆う、韓国の朴槿恵大統領の親友、崔順実氏(中央)=10月31日(共同)
 ただし、今年初め、崔氏が実質的に支配するスポーツと文化振興のための二つの財団が突然作られ、その金集めに大統領府が協力したことと、2つの財団が朴槿恵大統領退任後の活動の拠点になるという疑いが報じられたことが、その伏線としてあった。批判を受けた2つの財団は、崔氏の影響力を完全に排除する形で再発足させられ、崔氏は娘とともにドイツに逃避していた。実は、崔氏一家が慌てて出国する過程で、ある人物に廃棄を依頼したパソコンが記者の手に渡ったのだ。

 大統領は会見を開いて大統領選挙当選後、就任するまでの間に、一部の機密文書を崔氏に見せていたことを認めて謝罪した。しかし、大手のメディアの暴露合戦が続き、野党だけでなく与党も大統領の「道徳性」を批判する中、政界、言論界で誰も大統領を守ろうとせず、支持率も10パーセント台に急低下し、政治混乱が続いている。

 ちょうど舛添前東京都知事のずさんな政治資金の使い方や贅沢な出張などが連日、暴露合戦で報じられていた状況とよく似た雰囲気が醸成されている。親北左派はもちろんのこと、従来からの朴槿恵支持派も「このような大統領を持って恥ずかしい」と憤慨している。

 ただ、報道で伝えられる朴槿恵大統領の違法行為は、大統領就任前に引き継ぎ段階で入手した外交や南北関係に関する秘密文書を民間人である崔氏に見せ、自身の演説などに対してアドバイスをもらっていたことが大統領記録物管理法や刑法違反になる可能性があること、また、大統領就任後、機密文書である大統領の日程を事前に崔氏に伝えて着ていく服などについてアドバイスをうけていたこともやはり同じ容疑がある。