②についても、日本の違憲審査制度は機能不全に陥っており、憲法裁判所の設置が検討されてもよい。現行憲法の施行から70年近く経過した現在でも、最高裁が法律を違憲と判断したのは昨年12月に出された再婚禁止期間規定に関する違憲判決を入れてもわずか10件しかない。また、衆参の国会議員選挙に関する一票の格差訴訟で最高裁はここ数年「違憲状態」判決を繰り返しているが、選挙そのものを違憲・無効としたことは1度もない。
2015年11月25日、衆院選の「1票の格差」訴訟の上告審判決で最高裁が違憲状態と判断し、笑顔を見せる原告団の升永英俊弁護士(中央)ら
2015年11月25日、衆院選の「1票の格差」訴訟の上告審判決で最高裁が違憲状態と判断し、笑顔を見せる原告団の升永英俊弁護士(中央)ら
 投票価値の不平等は法の下の平等(14条)に違反する人権侵害であるとともに、民主主義を歪める異常事態であるが、最高裁によって長年放置され続けている。このような最高裁の「消極主義」は従来から問題視されてきたが、違憲審査制が現実にあまり機能していないという状況は、権利保障を本質的要素とする立憲主義にとって、最も深刻な問題であるはずだ。

 憲法保障・人権保障に専心する憲法裁判所は、立憲主義の統治システムの到達点であり、いまや現代憲法の標準装備とさえ言い得る。昨年夏の安保法論議でも明らかになったように、違憲の疑いのある法律について早期の違憲審査を可能とするためにも、憲法裁判所の導入はもっと真剣に考えられてよい。

 さらに、③の理念や価値観については、70年間受け継がれてきた平和主義を引き継ぐことはもちろん大切であるが、環境問題や財政問題など現在および将来の日本が直面する課題への指針として、「環境保護原則」や「財政均衡原則」などを憲法に掲げることも一考に値するであろう。

 分量の少ない「小さい憲法」、改正経験が一度もない憲法。これらは否定しようのない事実であるとともに、他の立憲主義諸国にはおよそ見られない日本に特殊な事実でもある。日本国憲法のこのような特性を踏まえたとき、我々に問われるのは、権力をよりよく統制するために憲法に十分な規定を補充し、憲法を社会の変化に応答的なものにしようとするのか否かである。

 そしてこの問いは同時に、日本が諸外国並みの憲法に追いつこうとするのか、それともこれまで通り特殊な憲法をもち続けるのか、という今後の日本の針路にもかかわる。憲法改正論議では、個別の問題の是非だけでなく、より大きな視点に立った議論が望まれる。