プロ棋士のレベルまで強くなるには、いま書いたようにプロ棋士の棋譜からの機械学習が有効だったのだが、コンピュータがプロ棋士のレベルに到達した最近は、プロ棋士の棋譜がコンピュータにとってよい学習データではなくなってきた。プロ棋士には失礼ながら、コンピュータよりも弱い人間の棋譜はもはや参考にならないのである。いまはコンピュータ将棋同士が対戦をしてその棋譜から機械学習をしている(強化学習と呼ばれる手法である)。インターネット上で強いコンピュータ同士が24時間ずっと対局していてコンピュータ同士の大量の棋譜が生産されている。いまはそれが学習データになっているのである。
 プロ棋士の棋譜から機械学習をしていたときはコンピュータ将棋は人間のような手を指していた。学習データが人間のものだったので、コンピュータ将棋が人間の定跡をなぞるようになるのは当然であった。いまや学習データはコンピュータ将棋同士の棋譜である。したがって人間とは異なるコンピュータ独自の手を指すようになってきた。最近のコンピュータ将棋の指し手がプロ棋士にとっても意外なものが多いのはそのためである。

 2016年3月にコンピュータ囲碁の「アルファ碁」がイ・セドルというトップレベルの棋士に圧勝したが、この「アルファ碁」もコンピュータ将棋同様に強化学習でコンピュータ同士の対戦で強くなったものである。「アルファ碁」もイ・セドルが理解できない手をいくつも打っていたことが知られているが、それは「アルファ碁」がコンピュータ同士で対戦して機械学習をしたことによる。
 
 そのような現状認識に基づけば、コンピュータ将棋を使えば人間よりもよい手を見つけることができるのは確かである。スマホに直接載っている将棋のアプリはパソコンに載っているものよりは弱いが、それでもプロ棋士にとって十分に参考になるレベルだと思われる。またスマホ経由で性能が高いパソコンなどに接続することも技術的に可能である(方法を教えてもらえばそれほど難しくはない)。そうすれば明らかにプロ棋士よりも強い。ということで、スマホの持ち込みが制限されていない状況では、スマホによるカンニングには明らかに効果があり、実行も可能な状況であった。