チェスは20年近く前に世界チャンピオンがコンピュータに負けていて、いまは圧倒的にコンピュータの方が強い。人間同士のチェスの重要な対局は電子機器は持ち込み不可というルールがかなり前から常識になっている。金属探知機で調べることもよくなされている。それでもチェスではスマホなどのカンニングが何度も起きている。
 
 終盤に一手ごとにおなかを壊しているという理由でトイレの個室にこもって出てきて、いい手を連続して指していたプロ棋士がいた。彼は疑われてその個室を調べたら彼のスマホが隠してあって、接続記録を調べたらコンピュータチェスにつながっていて、それと同じ手を指していたことが判明した。彼は当然失格処分になった。将棋もチェスにならってスマホ持ち込み禁止のルールにしておけばよかったのだが、身内の棋士を疑うようで嫌だ、コンピュータより弱いことを公式に認めるようで嫌だ、などの理由で見送りになっていた。今回、カンニング問題が起きてみると、将棋界も数年前にはルール化しておくべきであった。いままさに身内の棋士を疑う状況になってしまっているのである。

 人工知能はあくまで人間の道具であり、人工知能が進歩することによって人間はよりよい生活が営めるようになるはずである。しかし人工知能の進歩の過程でそれを人間が受け入れるには一定の時間がかかると思われる。その途中にはさまざまな不具合が起きる可能性がある。今回のカンニング問題もその不具合の一つである。この問題を貴重な教訓として人間と人工知能がうまく折り合いをつける方策を考えていきたい。