将棋界に世代交代の波? 「羽生世代」は曲がり角の時期なのか

THE PAGE

読了まで5分

(THE PAGEより2016年7月25日分を転載)
 将棋のトップ棋士、羽生善治三冠(45)が「不調」ではないかと、棋界で話題になっています。2016年に入り、王将戦の挑戦に失敗。自身ワーストとなる公式戦6連敗もあり、5月には28歳の若手、佐藤天彦八段(当時)を挑戦者に迎えた名人戦も1勝4敗で敗退、名人位を失いました。現在、防衛戦を行っている棋聖戦、王位戦もこれまでの羽生三冠らしからぬ将棋内容が目立っています。また、同年代のライバルで、十八世名人資格保持者の森内俊之九段(45)、永世棋聖資格保持者の佐藤康光九段(46)も、今年度は大きく負け越しています。元「週刊将棋」編集長の古作登氏(大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員)は「長きにわたって君臨した羽生世代だが、曲がり角の年齢に来たのではないか。ここ1年が羽生世代の分水嶺になる年になるかもしれない」とみています。

『ヒカルの碁』に続くか? 囲碁マンガ『星空のカラス』

 羽生三冠は史上3人目の中学生棋士としてプロデビュー。19歳で初タイトルとなる竜王を獲得し、翌年失冠したものの、4か月後には棋王を奪取。以後約25年間にわたり常にタイトルを持ち続けています。1996年には七大タイトルの独占を達成、これまでの通算獲得タイトル94期と歴代1位で史上最強の棋士ともいわれます。また、苦手戦法がないオールラウンダーぶりが強さの背景にあり、終盤の意表をつく勝負手で数々の逆転劇を起こしていることから「羽生マジック」とも呼ばれました。過去にもタイトルの増減はあったものの、一度失ったタイトルを再び取り返す姿も目立ち、成績が大きく落ち込んだことはありませんでした。

羽生善治棋聖=7月1日、新潟市
 しかし、2016年に入り、2勝1敗でリードしていた王将戦で3連敗し、挑戦に失敗。さらに名人戦では第2局で詰みがあった局面で詰みを逃して逆転負け。そのまま1勝4敗で敗れました。また若手の永瀬拓矢六段(23)の挑戦を受けている棋聖戦も2勝2敗と接戦。7月に始まった王位戦も初戦を落としています。棋聖戦第1局では無理と見られた攻めに出て、そのまま投了。第3局も逆転負けで、解説者からは「珍しいものを見た」という声も聞かれました。

 7月22日現在の羽生三冠の2016年度の成績は7勝10敗。また森内九段は3勝7敗、佐藤九段は3勝7敗で、過去高勝率を誇った3人の成績としてはかなり厳しい数字といえます。

「知の格闘技」コンディション維持が必要

 古作氏は「名人戦は詰みを逃したのが明らかに影響し、そのまま敗れた印象が強い。ほかでも羽生さんのパンチが届かないまま終わった将棋も見られる」と指摘。

 「長年複数タイトルを保持し、厳しい戦いを続けた“勤続疲労”がいよいよ出てきたのではないか。谷川浩司九段(十七世名人資格保持者)、中原誠十六世名人も45歳前後でタイトル戦線から遠ざかった。羽生さんも45歳で曲がり角の時期といえる。将棋は知の格闘技であり、トップを維持するにはコンディショニングが大事。その面で20歳代から30歳代前半の若手と比べ、40歳代中盤の不利は否めない。羽生世代がここ1年どう戦っていくか大変注目される」と話しています。

羽生善治棋聖に永瀬拓矢六段が挑む将棋のタイトル戦 「第87期棋聖戦五番勝負」最終第5局。勝利した羽生棋聖 =8月1日、新潟市西浦区の高島屋
 一方で、羽生三冠は最強のコンピューターソフトと対決するプロ棋士代表を決める棋戦「叡王戦」への参加を表明したことでも話題になりました。叡王戦はエントリー制で、羽生三冠は昨年の第1回は不出場。今季も参加を見送るという見方が多く、エントリー表明は波紋を呼びました。現在叡王戦では予選を突破し、決勝トーナメントに進出しているだけに、将棋ファンの間ではソフトとの対決への期待感は高まっています。「羽生さんの気持ちの中に、複数タイトルを保持している状態でソフトと対決したいという意識があるのかもしれない」(古作氏)。

 棋聖戦第4局は羽生三冠が快勝してカド番をしのぎ、8月1日に決戦の最終局を迎えます。さらに初戦敗れた王位戦、9月からは王座戦と防衛戦が続き、その合間にもほかの棋戦と過密日程が続きます。大山康晴十五世名人は69歳で亡くなるまで将棋界トップのA級を維持し、56歳でタイトルを獲得、66歳でもタイトルに挑戦するなど超人的な活躍を残した棋士もいるだけに、今後羽生三冠が調子を立て直し、さらに伝説を残していくのか。ついに若手世代がタイトル戦線の主役となるのか注目されます。

この記事の関連テーマ

タグ

将棋スマホ不正、三浦九段にモノ申す

このテーマを見る