電王戦「連敗」 将棋界はコンピューターとどう向き合うべきか 

THE PAGE

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(THE PAGEより2014年5月23日分を転載)
 プロ棋士(人間)とコンピューターソフトが激突する将棋の団体戦「電王戦」は2年連続で人間側が敗北を喫したことで話題になりました。チェスやオセロに続き、「将棋もコンピューターが近々人間を追い越す」という声も強まっています。将棋界とコンピューターは今後どのような関係を作っていくべきなのか。コンピューター将棋に詳しい大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員の古作登氏(元週刊将棋編集長)に聞きました。

 ――過去2年の電王戦を見てコンピューターの現在の実力をどう見ますか

 「ソフトから見て7勝2敗1持将棋ですから、客観的に見てもすでにトップクラスの棋士(平均的なプロ棋士に対し7割以上の勝率)に並んだと言ってもいいのではないか。ただ部分的にみるとコンピューターの実力もあれと思わせる面もまだある。対決といった面で今が一番面白い時期だと思う」

 ――印象に残った対局は

 「一般的にコンピューターソフトは形勢判断を強気に設定し、思い切った踏みこみをするのが強みだ。だが第四戦のツツカナ対森下卓九段で見せたツツカナの戦いぶりは、人間が指しているような手厚い負けにくい指し回しで、どちらが森下さんかわからない感じで驚かされた。この指し方がやや優勢とみられた森下九段を戸惑わせ、逆転されてしまった印象がある」

 ――次回電王戦が行われる場合、連敗したプロ側はタイトル保持者の投入が求められそうですが

 「今年の棋士メンバーはタイトル保持経験者の屋敷伸之九段もいたが、順位戦のランキングからいえば5人全員がトップ20に入っているわけではなく、ベストメンバーだったとはいえない。次回やるとすれば現役タイトル保持者1人、トップ10クラス1人、残り3人はコンピューターと対戦する感覚に慣れている若手強豪棋士といった構成が求められるのではないか。ただプロ棋士にとってコンピューターに敗れることは選手生命の危機ととらえられる可能性もあり、プロボクシングの興行のようなうまいマッチメークをしないといけない。先手、後手各三回ずつの六番勝負といった形式もあるのではないか」

第1期電王戦の第1局で、「PONANZA」に敗れた山崎隆之八段 =4月10日、岩手県平泉町の中尊寺
 ――将来コンピューターソフトがプロ棋士の公式戦に参加すべきだと考えますか

 「人間同士の対局は疲れや勘違いによって逆転する。不利な状況で勝負手を繰り出し相手を動揺させるといった勝負の楽しみがある。スポーツでもミスをしない選手はいない。間違いは恥ではなく逆に面白さを与え、棋譜に味ができるともいえる。だから既存の棋戦にコンピューターが出るのはなじまないのでは。やるなら別の棋戦を作った方がよい」

――将棋界は今後、コンピューター将棋とどう向き合うべきと考えますか

 「携帯電話やパソコンでネット対局ができ、タイトル戦も動画サイトで中継され人気になっているようにwebと将棋は相性がよく、将棋界の幅が広がるいい傾向にあると思う。電王戦も『黒船襲来』のようにとらえず、プラスに活用することが大切だ。私は以前から自分が指した将棋の棋譜をコンピューターに解析することをやっているが、それによって自分が陥りやすいくせ、ミスが出やすい状況がかなりわかった。現在51歳だが、近年もアマチュア大会で上位入賞できたのはコンピューターを使った取り組みの効果があったと思う。自分がまったく考えない手も提示してくれるし、コンピューターは人間を補助するものとして大変有用なのは間違いない」

――人工知能研究の世界ではコンピューターの進化はさらに加速し、2045年ごろには人工知能が人類の知能を超えてしまうと予測する「2045年問題」という議論も出ています

 「以前はコンピューターの将棋を見ると、これはコンピューターが指しているとわかることが多かったが、最近はコンピューターに人格があるような錯覚を覚えることがある。例えば局面評価の設定を強気からネガティブに見るように変えた場合、負けるのを怖がるコンピューターが出てくるのかといった疑問も生まれる。映画・2001年宇宙の旅では、意思を持つコンピューターが出てくるが、コンピューター将棋もそのような事態が起きるのか。興味はあるが、怖い気持ちもあります」

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