憲法改正を「ご都合主義」で否定する日本共産党を許してはいけない

『岩田温』

読了まで7分

岩田温(政治学者)

 周知のように日本共産党は「護憲政党」を標榜している。そして、自衛隊は違憲の存在だと位置づけている。その日本共産党が、民進党と選挙協力を進め「国民連合政府」を樹立しようと模索している。

会見する共産党の志位委員長=2月22日、東京都渋谷区の党本部
 一体、日本共産党は、自衛隊を違憲の存在であると、その存在を否定し、非武装中立路線を貫くのか、さもなければ、自衛隊の解体までを求めるのか。多くの国民が疑問に思うところであろう。

 この問いに対する共産党の立場は奇妙極まりないものだ。2015年6月23日に日本外国特派員協会で共産党の志位委員長は、自衛隊に関する質問に関して次のように答えている。

 「安全保障の問題ですが、私たちは日米安保条約を廃棄するという展望を持っておりますが、そのときに自衛隊も一緒に解消する、という立場ではないんです。それは、安保条約の廃棄に賛成の方でも、自衛隊は必要だという、国民的な合意のレベルが違うということです。ですから、私たちは自衛隊は違憲の軍隊だと考えておりますが、これを一気になくすことはできません」

 「私たちが政権を担ったとして、その政権が憲法9条を活かした平和外交によって、アジアの国々とも世界の国々とも平和的な友好関係を築き、日本を取り巻く国際環境が平和的な成熟が出来て、国民みんなが"自衛隊は無くても 安全は大丈夫だ"という圧倒的多数の合意が熟したところで、9条の全面実施の手続きを行う、すなわち自衛隊の解消へ向かうというのが私たちの立場なんです」

 志位氏の主張はあきらかにおかしい。第一に、日米安保条約を廃棄することと自衛隊を解体することに関して国民的な合意のレベルが違うというが、本当だろうか。志位氏の主張に従えば、日米安保条約を敵視し、これを廃棄することに関する国民的な合意が形成されているかのようだが、これは実態と大きく異なる「虚構」の議論ではないだろうか。
立憲主義の破壊を宣言した志位氏の台詞

 平成26年度における内閣府の世論調査の結果をみれば、志位氏の主張が虚構に過ぎないことは明らかだ。内閣府の世論調査では、「日本は現在、アメリカと安全保障条約を結んでいるが、この日米安全保障条約は日本の平和と安全に役立っていると思うか」との質問に対して、「役立っている」とする者の割合が82.9%(「役立っている」38.5%+「どちらかといえば役立っている」44.4%)、「役立っていない」とする者の割合が11.5%(「どちらかといえば役立っていない」8.9%+「役立っていない」2.7%)となっている。 

駆け付け警護」の訓練を公開、国連職員に模した人物(青い帽子)を救出する自衛隊員=10月24日、岩手県内の陸上自衛隊岩手山演習場
 8割以上の国民が日米安保条約を日本の安全保障のために有益な条約だと考えているのが現状であるにもかかわらず、まるで、日米安保条約の廃棄に関する国民的合意が形成されているかのように語るのは、現実をみようとしない「反知性主義」的な議論か、極めて欺瞞的な議論かのいずれかだと言わざるを得ない。そして日本共産党の自衛隊に関する議論は噴飯物と言わざるを得ないレベルの、欺瞞的な議論だ。

 志位氏に従えば、「自衛隊は違憲の軍隊だと考えております」ということになる。しかし、自衛隊を支持する国民が圧倒的大多数である以上、「違憲の軍隊」である自衛隊を直ちには解散しないというのだ。

 これは、近代立憲主義を破壊することを宣言した恐ろしい台詞だ。立憲主義とは、行政府、すなわち政府の暴走を食い止めるために憲法を尊重する義務を行政府に課したものだ。この点では、「リベラル」の人々の主張と私の主張とに径庭はない。

 私自身は、共産党が主張するように自衛隊が違憲の可能性が高いと考えている。だからこそ、憲法を改正して違憲状態を放置するようなことがあってはならないと主張しているのだ。近代立憲主義を空洞化させないためにも、自衛隊の存在を憲法上に明記すべきだと考えている。

 歴代の自民党政権は、本来的には憲法改正を行うべきでありながら、国民が憲法改正、九条改正に反対する可能性を恐れ、非常に際どい、実質的には詐欺まがいの解釈改憲によって、自衛隊を「合憲」と位置づけてきた。こうした憲法に対する極端な解釈は、一人の政治学者としてみれば、許しがたい欺瞞以外の何でもないのだが、一人の国民としてみれば、現実的に日本を守るために致し方なかった選択であったのかとも思えなくもない。
憲法を改正しなければならない最大の理由

 憲法と自衛隊の関係に関する共産党の解釈は異常なものだ。共産党は、自衛隊の存在そのものが違憲だという。仮に自衛隊の存在そのものが違憲であるならば、ただちに憲法を改正して憲法が自衛隊の存在を認めるか、自衛隊の存在そのものを否定し、憲法を守らなければならない。

衆院本会議で安倍晋三内閣不信任決議案の賛成討論をする
共産党の志位和夫委員長=5月31日、国会
 だが、共産党は、存在そのものが違憲である自衛隊の存在を認めてよいというのだ。要するに憲法に背く存在を認めてしまえという立場なのだ。この立場は恐ろしい。何故、恐ろしいかといえば、違憲の存在が認められるということは、事実上憲法が空洞化することを是認しているからだ。立憲主義の破壊を堂々と宣言しているに等しいからだ。

 我々国民の基本的な人権は憲法によって保障されている。だから、基本的な人権が踏みにじられるような行為があった場合、それは憲法の精神に反する行為であり、許されない行為ということになる。だが、共産党の解釈に従えば、憲法に背くような行為であったとしても、共産党が認めれば、そのような行為ですら是認されてしまう可能性を否定できない。

 国民の権利、人権を守るためには、行政府の暴走を食い止めなければならない。そのために人類が考案した一つの偉大な防御策が「立憲主義」だ。憲法によって、行政府の暴走を食い止めようというのが最大の狙いだ。だが、共産党は、自分たちの匙加減で「違憲」の存在であろうとも、認めることが出来ると公言しているのだ。こうした「立憲主義」を否定するかのごとき恐るべき言説を許容することは出来ない。

 日本国憲法を改正しなければならない最大の理由は、我が国の国防を担う自衛隊が、まるで違憲の存在であるかのように捉えられる憲法第九条第二項を改めなければならないからだ。まるで立憲主義を破壊しかねない共産党のような主張を展開するのではなく、堂々と自衛隊を憲法の中に位置づけるべく、憲法改正を行う必要がある。


この記事の関連テーマ

タグ

今さら聞けない憲法改正の核心

このテーマを見る