松山英樹が北京で行われたWDC HSBCチャンピオンズで優勝。全英オープン、マスターズなどの4大トーナメントの次のランクに位置付けられる大会をアジア人で初めて制覇し、ますますメジャートーナメント優勝の期待が高まってきた。応援する側から見れば、日本ゴルフ界の長年の夢「日本人初のメジャー制覇」の快挙を射程内に捉えたように感じる。もはや松山のメジャー優勝は、日本人だけが贔屓で願う夢ではない。 

HSBCチャンピオンズで初優勝を飾り、トロフィーを手に笑顔の松山英樹=10月30日、中国・佘山国際GC
HSBCチャンピオンズで初優勝を飾り、トロフィーを手に
笑顔の松山英樹=10月30日、中国・佘山国際GC
 世界のゴルフファンが当然のように想定する出来事になっている。アメリカでトーナメントごとに行われる優勝予想投票でも、松山の名はいつも上位にランクされるようになった。

 松山の強さの要因はいくつも挙げられるが、ゴルフそのもので言えば、抜群のアイアンショットの精度にある。ドライバーの飛距離は世界のツアープロの中ではごく平均的な距離に過ぎないが、それ以外のショットは世界のトップクラス。今回の優勝も抜群のアイアンショットと安定したパットでの圧勝だった。

 もうひとつ、松山の強さを挙げるなら、揺るぎないメンタリティーだろう。試合展開に一喜一憂しないだけでなく、他人のゴルフを羨んだり、自分にないものを求めてゴルフを崩さない。ゴルファーは「無い物ねだり」になりがちだ。ことに「ドライバーをもっと飛ばしたい」と思うのは多くのゴルファーの希望。だが、松山は世界一の飛距離に執着せず、世界一のアイアンで頂点に立てると信じて戦っているように感じる。そして事実、HSBCチャンピオンズ優勝で「世界一」も獲得した。

 世界の舞台で気後れしないたくましさも松山の持ち味だ。世界デビューの早さも影響しているかもしれない。松山は東北福祉大に進学した2010年、アジアアマチュア選手権に優勝し、翌年のマスターズ出場権を得た。そのマスターズで27位タイ、ローアマチュアにも輝き、順風満帆な海外デビューを果たしたとき松山はまだ19歳だった。

 しかし、松山の若さをさほど驚かない雰囲気がその頃の日本にはあった。言うまでもなく、同学年の石川遼が2007年、高校1年(15歳)でプロツアーに優勝。一躍、ゴルフ界だけでなく、お茶の間のヒーローになった。しかも石川遼は、プロ転向したシーズンに今度は16歳でプロツアーに優勝。飛ぶ鳥を落とす勢いは止まらず、石川遼はゴルフ界を象徴する存在となった。