「熱しやすく醒めやすい」のは日本人の特徴のひとつだが、集団的自衛権を巡る議論はまだ続いている。憲法記念日を前に、憲法オタクのフリーライター・神田憲行氏がレポートする。

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 集団的自衛権について昨年までは違憲派の押せ押せムードだったが、今年に入り、違憲派に疑問を突きつける動きが広まっている。
東大大学院法学政治学研究科教授の井上達夫氏
東大大学院法学政治学研究科教授の井上達夫氏
 きっかけは元最高裁判事の藤田宙靖・東北大名誉教授が雑誌「自治研究」2月号に掲載した論文「覚え書き-集団的自衛権の行使容認を巡る違憲論議について」だ。藤田氏はこの中で違憲論議が「必ずしも、一貫した精緻な議論が展開されているようには感じられない」として、違憲説を検証して疑問を指摘している。

 この論文に「天啓を得たような感動」と飛び付いたのが、昨年まで国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官を務めていた自民党の礒崎陽輔氏である。昨年、立憲主義について「学生時代の憲法講義では聴いたことがありません。昔からある学説なのでしょうか」とツイートして一躍脚光を浴びた東大法学部卒の礒崎氏は、藤田論文について「一般の皆さんには難しい点もあるので」と、ブログでその内容を要約している。もっとも藤田論文には安倍首相の発言を捉えて「真に謙虚さと節度を欠いた発言ではあるが」など、ところどころ安倍政権の政治的振る舞いに関して苦言を呈しているのだが、これはスルーされているようだ。

 藤田論文に名指しで批判された長谷部恭男・早稲田大教授はかつて出した論文集「憲法の理性」に反論文を掲載してわざわざ増補新版にして出版した。

 元最高裁判事vs.学会の権威という、憲法オタクにはたまらない重量級の殴り合いである。

 と、ここに、改憲派護憲派ともに石を投げるどころか椅子を投げつける人が現れた。東大で法哲学を教えている井上達夫教授である。3月に出た新著「憲法の涙」(毎日新聞出版)の帯は、

《改憲派も/護憲派も/ウソばっかり!》

《安倍首相も、/護憲派も、/憲法学者ですら、/私のいうことを/聞いてくれない(涙)/-日本国憲法》