渡辺輝人(弁護士)
(Yahoo!個人より2015年7月7日分を転載)
 高村正彦・自民党副総裁や、公明党・山口那津男代表、中谷元・防衛大臣をはじめ、与党幹部が過去の自らの見解や政府としての答弁をかなぐり捨てて、「安保法案」(戦争法案)や、集団的自衛権について、憲法9条に違反しない、と言い張っており、支離滅裂な発言をくり返しています。そんななか、意外と顧みられていないのが、安倍晋三首相の過去の発言です。

 安倍首相の憲法9条に対する見方が端的に表れているのが、平成12年5月11日の衆議院憲法審査会での意見表明です。


 集団的自衛権というのは個別的自衛権と同じようにドロワナチュレル、つまり自然権なんですね。自然権というのは、むしろこれはもともとある権利でありますから、まさに憲法をつくる前からある権利というふうに私は考えるべきなのではないか、こういうふうに思います。

 そもそも、この集団的自衛権は、権利としてはあるけれども行使できないというのは極めておかしな理論であって、かつてあった禁治産者、今はありませんけれども、禁治産者の場合は、財産の権利はあるけれども行使できないということでありますから、まさに我が国が禁治産者であるということを宣言するような極めて恥ずかしい政府見解ではないか、このように私は思いますので、これは九条のいかんにかかわらず、集団的自衛権は、権利はあるし行使もできるんだろう、このように私は思います。 

出典:平成12年05月11日 衆議院憲法調査会議事録

安倍首相
質問に答弁する安倍首相
 要約すると、(1)集団的自衛権は憲法以前の自然権である、(2)集団的自衛権を有するが行使できないとする政府解釈はおかしな理論であって禁治産者であることを宣言するような恥ずかしい見解、(3)従って憲法9条のいかんにかかわらず集団的自衛権は行使できる、ということになります。

 「恥ずかしいから」の一言で憲法9条を否定する恐るべき価値観ですね。「禁治産者」(平成12年4月に成年後見制度に移行し廃止)を「恥ずかしい」と述べる点にも、差別的な価値観が見てとれます。なお、日本国憲法で禁治産制度に概念が近い制度をあえて挙げるなら、憲法5条と皇室典範に定められた摂政の制度なのですが、安倍首相は摂政の制度も恥ずかしい、というのでしょうか。