現代の資本主義は、「イベント資本主義」ともいわれている。何か政治・経済的な問題が世界のどこかで発生すると、それが引き金になり、グローバルなリスクとなって顕在化する。実際には各国の株価暴落や、為替レートの急変として現れる。それによって人々の生活も非常に不安定となってしまう。世界の投資家たちがリスクのある投資態度をとることを「リスク・オン」、その反対にリスクを回避する投資態度を「リスク・オフ」といっている。

 この世界中の投資家たちが「リスク・オン」と「リスク・オフ」のいずれに傾斜するかは、最近ではアメリカ大統領選挙とアメリカの金融政策によって大きく左右されてきた。そして今日もまた、「イベント資本主義」の性格がよく表れた相場になった。日本経済にはもちろん短期的には不運なことといえるだろう。
(画・小鳥こたお)
(画・小鳥こたお)
 またトランプ・ショックと同時に、世界経済の関心は、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が年内に利上げをするかどうかにも集まっている。FRBのフィッシャー副議長は、雇用情勢を受けて利上げの根拠が強まったことをコメントしている。フィッシャー副議長は早期利上げをけん引している人物なので割り引きが必要だが、いずれにせよFRBの政治力学的にも利上げは確実である。

 問題は、それが次回のFRB会合が行われる12月14日なのか、あるいは年をまたぐかの違いだけである。トランプ勝利による影響を読むのは困難だが、トランプ氏の主張は金融緩和の継続に行き着く可能性が高いので、FRBとしてはいまのうちに利上げしたいだろう。それは利上げのための利上げといえ、「政治的」な色彩のものだ。

 今後の為替レートの動向は、日本とアメリカの金利差や日米マネタリーベース比率などで判断する方法があるが、より根源的なのはもちろん日本銀行とFRBの金融政策のスタンスの相違である。FRBはアメリカの雇用情勢の改善を受けて、それが「完全雇用」であると判断しての利上げスタンスである。対して、日本では完全雇用には遠い状況にある。そのため日本では金融緩和の政策スタンスが今後も継続していく。この両国の金融政策のスタンスは、ここ1年近く変更はないはずだ。そのため、実はFRBが今回利上げしてもそれは単なる「イベント」でしかない。

 だが前述したように、ここ数年の世界経済は「イベント資本主義」化の様相を強めているので、この利上げにより円安ドル高により傾斜する蓋然性は大きい。このことは日本経済にとっては(輸出増加や企業のバランスシート好転など)好ましい影響を与えるだろう。ただアメリカ経済は今後も追加的に利上げが行われる可能性は低いという見方も有力だ。雇用が改善していても必ずしも労働参加率の上昇を伴っていないし、またインフレ率も目標に比較して低いままだ。