山本一郎(個人投資家・作家)

 山本一郎です。お祭り騒ぎが好きです。

 今日11月9日、開票が行われたアメリカ大統領選挙ですが、先ほどドナルド=トランプ陣営が事実上の勝利宣言を行ったとのことです。また、議会選挙も共和党の勝利に終わりまして、アメリカ政治は一風変わった「トランプ大統領」の選出をもって歴史的な転換点を迎えることになりそうです。

 すでに各種メディアでは投票結果に対する属性別の内容から「アメリカ人の真意」を知ろうと結果報道を開始すると思われますが、数字だけ見ていきますといろんな統計モデルで事前の投票予測をかいくぐる形で各種調査機関は「ヒラリークリントン女史優勢」を伝えていました。選挙人の予測で80人近い”読み違え”をする調査機関もあったようですが、その背景には”静かなる地方”の地滑り的な共和党支持、または内向き志向を選挙結果からは読み取れます。

で演説するトランプ氏=11月7日、米ノースカロライナ州
で演説するトランプ氏=11月7日、米ノースカロライナ州
 事前予想では「トランプさん支持者はどの政策を支持しているのか」の分析が進んでいたようですが、実際のところ、投票前日に発表された調査結果でもトランプ優勢とみられるこれらの赤い地区でも「クリントン優勢」と見られる箇所が多かったのが特徴です。

 これらが投票日になって突然トランプさんに2.8%以上の得票の下駄を履かせる事件があったか、と言われるとこれといってないわけで、つまりは「最初からトランプ支持者か、ヒラリー女史に投票をしないことは決めていた」有権者がいた、ということになります。

 逆に、ヒラリー女史に投票した人たちが多かった地域は、テキサス州、フロリダ州などを除き、明らかに都市部が中心です。都市に住む穏健なリベラル層がヒラリー女史に投票したのかなと思いきや、政治的コミットの強い人がヒラリー女史を支持し投票の中心になったと判断がつくデータが特になく、現在まだ混沌としています。

 ここで強く鼻につくのは、いわゆる「負の支持率」、すなわち「ヒラリー女史を勝たせたくない」有権者対「トランプさんを勝たせたくない」有権者の争いです。まだすべての地区を解析したわけではありませんが、ヒラリー女史を強く支持する層よりも、トランプさんを絶対勝たせたくないと回答する層が都市部に多く、これらのほうがヒラリー支持者よりも固くヒラリー女史に投票する傾向が強く見受けられます。逆もまたしかりです。

 そうなると、今回のアメリカの大統領選挙とそれに伴う議会選については、実は壮絶な譲り合い対決なのではないかとさえ感じるところです。選挙中盤でも「トランプさん支持者は強力な反知性主義者ではないか」という中傷が都市部を中心に、またSNSでも盛んに喧伝され、TwitterやFacebookなどでも多数の声が上がり、かなりの部分がクリントン陣営の工作だったと思われますが、実際の地方の得票の流れを見る限り、ほぼ完全に地滑り的にトランプ票になっております。

 それも、トランプさんを熱烈に支持する層よりもヒラリー女史を嫌う層がトランプさんに投票したようです。ネット系の調査会社でも、政治的発言において有権者のメジャーなスタイルは「トランプさんは好きではないけど」という前置きとなる文節が多数計測されるなど、トランプの過激な姿勢を支持することは留保しつつヒラリー女史を支持しないことを説明する感じの人たちがネットでは多かったのでしょうか。