川端康生(フリーライター)

 日本代表が苦しんでいる。ここまで4戦を終えて2勝1分け1敗。このままならアジア予選でのワールドカップ出場権獲得はならず、大陸間プレーオフに回る順位に甘んじている。しかも、結果(成績)だけでなく、内容もよくない。初戦で敗れたUAE戦だけでなく、終了間際の山口の劇的なゴールで勝ったイラク戦も、負けていてもおかしくない内容だった。

 敵地でのオーストラリア戦にしても、引き分けという結果は納得できるものだったが、内容的には予想以上の劣勢。ボール支配率で言えば、日本3対オーストラリア7。何とか守り切って、辛うじて手にした勝ち点「1」だった。「強敵とのアウェーだったのだから」と納得することはできても、「ではホームでなら勝てるか」と問われれば沈黙せざるを得ない、そんな試合だったのだ。
【日本―オマーン】前半、攻め込む本田=カシマ
【日本―オマーン】前半、攻め込む本田=カシマサッカースタジアム
 同じ文脈は、「まだ前半戦だから」という楽観に対しても流用できる。つまり、まだ前半戦であることは確かだが、「では後半戦になって巻き返せるのか」と問われれば…。それほどまでに、ここまで4試合の日本代表の戦いぶりは悲観的なものだったということだ。

 そんな現状のせいだろう。「本田圭佑」がしきりに取り沙汰されている。不調の本田をスタメン起用し続けるべきか、否かである。

 彼に焦点が向けられるのは当然だ。日本代表の中心、王様、アンタッチャブル……表現は何でもいいが、近年の日本代表を牽引し、それどころかチームが苦境に陥ったときいつも存在感を示してきたのが彼だったからだ。苦しいときに頼りになる男、それが本田だった。

 そもそもその登場からそうであった。ビッグプレーヤーとして認知されることになった南アフリカ・ワールドカップ。あのときも日本代表は危機にあった。3戦全敗濃厚。そんな前評判を覆し、チームのムードを変えたのは初戦での本田のゴールであった。決して見栄えのいいゴールではなかったが、それをきっかけに日本代表は突然、変身。決勝トーナメント進出を果たしたのである。

 実は大会を通じて本田のゴールは2得点だけだったのだが、得点以外のプレー、ピッチ上での振る舞いも含めて、そのインパクトは強烈だった。そこから“本田ジャパン”ともいうべき時代が始まったのである。以後6年、小さな波はありつつも、日本代表において常に本田は絶対的な存在感を放ち続けた。「結局、本田だったね」。苦戦の後でそんな呟きを漏らしたことが幾度となくあった。

 ところが、その本田が明らかに不調である。不調というより、パフォーマンスが低調なのだ。原因はやはり所属クラブであるミランで出場機会が得られていないことだろう。ポジションをつかめないでいる今季はまだトータルで81分(12試合終了時点)しか出場できていない。

 サッカーに限ったことではないが、練習と試合は違う。練習でどれほどトレーニングをしていても、試合に出場できなければ「ゲーム体力」は落ちる。当然のことながら「ゲーム勘」も失われてしまう。事実、この予選の中でもそうした兆候は見られた。動きはいつもどこか重く、苦しそうに肩で息をする姿。パスやトラップといったボールスキルでのエラー。見えにくいところでは相手選手との駆け引きでの後手。とにかく「らしくないプレー」が随所に見られたのだ。

 何より僕がショックだったのは、彼がボールを失うシーンが再三あったことだ。ボールキープ力は彼の最大のストロングポイントである。本田にボールを預ければ奪われることはない。それが日本代表チームに安心感をもたらしてきたのだ。ところが、それがままならなくなっている。いや、それさえもままならなくなっている。それほど本田個人のパフォーマンスが低下しているということである。