李受玟(韓国大手経済誌記者)

 『韓国のプライド』三星(サムスン)電子がGalaxy Note7(ギャラクシーノート7)の発火事件のせいで最大の危機に陥った。原因が明確になっていないため、米国と日本をはじめ、多くの国で乗客の安全を理由に、この機器の機内に持ち込み禁止令を下すなど、10月11日販売中止の決定が出た後も事件の影響はまだ残っている。
サムスン電子「ギャラクシーノート7」の販売中止を案内する韓国の携帯電話ショップ=10月11日、ソウル(AP)
サムスン電子「ギャラクシーノート7」の販売中止を案内する韓国の携帯電話ショップ=10月11日、ソウル(AP)
 5年ぶりに初めてサムスン電子の年売り上げが200兆ウォン(18.4兆円:1ウォン=0.0921円 2016年10月20日時点)を下回るものと予想される中、消費者の信頼を回復して再びアップルのiPhoneと対等な競争ができるかどうか注目される。

 韓国のメディアはGalaxy Note7を、韓国のスマートフォンの歴史の中で最も短い寿命を記録した製品だと呼んだ。約50日間だけ販売されたGalaxy Note7の歴史は次の通りだ。

 今年8月2日、サムスン電子は米ニューヨークで「今までのどのスマートフォンより優れている」といいながら、Galaxy Note7を公開した。この機器は同月19日から米国など世界各国で販売された。しかし5日後の24日、韓国のあるインターネット・コミュニティーで、「火と煙が出る」との書き込みが掲載され、サムスン電子の悩みは始まった。 米国や豪州でも発火が相次ぎ、サムスンは必死に原因を探し始めた。

 機器の公開1ヵ月後の9月2日、サムスン電子はバッテリーの欠陥を公式的に確認し、「この時まで販売した機器すべてを新品に交換する」と発表した。バッテリーを納品した中国の会社で規格通りに製品を生産してないという点を原因として挙げた。韓国と米国ですぐ交換が始まった。しかし、問題は続いた。9月26日、中国で交換された機器でまた出火。10月1日には韓国でも新しい機器の発火事件が報告された。「バッテリーが原因」といわれていたサムスンの言葉は、消費者らにこれ以上信頼できない主張になった。欠陥を修正したという製品が再び爆発したその時点で「信頼のサムスン」はいなくなっていた。

 事態がここまで来ると、韓国はもちろん、世界中でサムスン電子を信じて新製品を購入した人たちは不安になった。多くの韓国人たちはこう心配した。『私が寝ている時にスマートフォンで火が出たらどうする? 知らないうちに家が燃えてしまったら?』『子供が持って遊んでいる途中に火が出たらどうしよう』など。

 結局、サムスン電子は、グループの研究所と政府機関に分析を依頼し、バッテリー自体の欠陥はないが、外部の衝撃で発火するという答えを得た。しかしスマートフォンを落とすことはいつでもある。消費者はGalaxy Note7を避け始めた。サムスン電子はこれ以上後退する場所もなかった。最後の決断がくる時だった。

 今月11日、Galaxy Note7の販売と交換をすべて停止するという発表は、事態がさらに拡大することを防止しようとするサムスン電子が出した決断だったが、次の悪い道が待っていた。販売を強行して人がけがをしたり、死亡したりするかも知れない。ブランドのイメージは取り返しのつかないところに落ちてしまったが、最後まで行くのではない。そういう面で追加発火の可能性を事前に断ったサムスン電子の選択は正しかった。しかし、この事態が売上に残した影響は否定できない。

 サムスン電子は今年4四半期から来年1四半期までGalaxy Note7の販売の機会を失うことで、被る損失が3兆ウォン(約2760億円)以上に達すると発表した。今までの販売中止による直接的な費用は既に4四半期の業績に反映したが、少なくとも2四半期以上の売上が打撃を受けると予想される。一部メディアでは北米地域のブラック・フライデーなど、スマートフォン販売シーズンの第4四半期に6兆ウォン程度の売り上げが発生する機会が空中分解したと報道した。