牧島功 神奈川県議会議員
 取材が始まるなり早速タバコをくゆらせる自民党神奈川県議の牧島功氏。1日でピースを50本吸うヘビースモーカーだという。

 「ピースのタバコらしい香りがたまらない」と語る牧島氏は、昭和42年、小泉純一郎元総理の父・小泉純也元防衛庁長官の秘書として政治の道に入った。昭和50年に横須賀市議に初当選し、3期務めた後、昭和62年から神奈川県議会議員として活躍している。

 平成22年、神奈川県は全国で初めて「受動喫煙防止条例」を制定。以来、一貫して問題提起を行っている牧島氏に、神奈川県の現状についてインタビューした。

松沢知事の狙いは「全面禁煙」だった


 ――国が定めた「健康増進法」では、受動喫煙を防止する措置をとるよう求めていますが、この法律についてはどうお考えですか。

 牧島 健康で長生きしたいと思うのは、誰しも同じ。国民の普遍的な願望です。そこに喫煙を組み入れていったから、タバコは健康に害があると考える人が多くなった。もちろん、そうでない人もいますが。

 ただ、その絶対数が違いすぎます。非喫煙者が75パーセントで喫煙者は25パーセント。多数に決すれば、禁煙こそ望ましいということになるのも無理からぬ話です。だからといって、多数の意見が必ずしも正しくないことは歴史が証明しています。こういう議論になるのは、未熟な民主主義のせいだと思います。

 ――未熟な民主主義とはなんでしょうか。

 牧島 タバコを「文化」として議論せずに、害があるかないかという点だけで否定すること自体が未熟だと思います。多様性を認め合わないと、文化は成熟してきません。

 ――神奈川県で全国に先駆けて受動喫煙防止条例(「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」平成22年4月1日施行)を定めた理由はどこにあったのでしょう。ずいぶん話題になりましたが。

 牧島 提唱者の松沢(成文)前知事の狙いもそこにあったんじゃないでしょうか。最初にやればマスコミが騒ぐ。そういうことを熟知した人でしたから、パフォーマンスの一つだったんじゃないかな。

 ――松沢前知事は〝全面禁煙〟にすることを目指していたようですね。

 牧島 まず禁煙議論から始まり、最終的に受動喫煙防止法に落ち着きました。本人は最後まで「禁煙条例」と言っていた。そういう考え方の違い、文化価値観の差は、埋められるようで埋めきれません。お互い永久に平行線で、相手の言っていることが理解出来ない。その結果、「分煙」に行きついたのです。

 ――議論を進めるなかで、牧島先生たちの活動を阻止しようという動きがあったのではありませんか。

 牧島 批判の対象にされたのは事実ですが、議論を深め、より正常な形にしていっただけのことです。

 ――どのように歩み寄ったんですか。

 牧島 「分煙」にしたことです。禁煙にするくらいなら、国の法律でタバコを作ることも売ることもやめさせるべきです。国家としてタバコを文化として認め、製造も販売もしている以上、〝法〟を凌駕する条例なんてありませんから、禁煙などできない相談です。

 文化観、価値観の違いは大きいですね。およそ500年も日本人に親しまれてきたタバコを文化と考えるのか、諸悪の根源と考えるのか。この両者が相交わることはありません。

 議論が始まったときには非難や中傷、妨害が波のように押し寄せてきて、時には恐ろしささえ感じました。

 このような二極化現象を引き起こしたのは、マスコミや評論家によって、タバコの害が針小棒大に吹聴されてきたためであることは否定できないと思います。普通の考え方が出来る人たちならば一笑に付す話なのに、あたかもタバコと肺がんに因果関係があるかのように広く喧伝されてしまった。何とも思っていなかった方々に、「子供に悪い」「健康に悪い」と洗脳して、タバコ嫌いな人を〝増幅〟させたことに問題があります。

 ――平山論文が「受動喫煙は体に悪い。肺がんになる」と主張したのがそもそもの根源だという説があり、松沢前知事も、この論文に依拠したのではないかと思うのですが……。

 牧島 肺がんと煙草の因果関係を立証できた人は誰もいないわけだし、吸う人は信じていないんじゃないでしょうか。でも、吸わない人にとってはあの論文は人に禁煙をすすめる、もしくは嫌煙派になる大きなきっかけになったかもしれませんね。

 松沢前知事のやり方は世論を味方につける典型的な例だったと思います。圧倒的にタバコを吸わない人が多いですからね。でも、全国に広がらない。

 ――山形県も「山形県健康づくり推進に関する計画(案)」で受動喫煙防止条例を制定しようとパブリックコメントを募集(平成25年2月4日~28日)したところ、949件中、943件が反対だったそうです。

 牧島 二番煎じ、三番煎じではインパクトがない(笑)。それに、神奈川県の状況をみて喫煙者が声を上げるようになったんでしょう。極めて常識的な姿に戻ってきていると思います。

条例見直しに向けて


 ――神奈川県の受動喫煙防止条例の附則には「知事は、施行日から起算して3年を経過するごとに、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とあります。平成22年の施行から3年経ち、今年は条例見直しが検討されていると思いますが、どのような活動をお考えですか。

 牧島 大きく分けて3つの課題があります。

 1つ目は、受動喫煙防止条例が県民にどう受け止められているか。認知度、賛否の問題も含めて、もう一度検証すべきだと思います。

 2つ目は、〝禁煙〟ではなく〝受動喫煙防止〟であることがどれだけ県民に認知されているか。よくあるトラブルなのですが、神奈川県でタバコを吸っている人を見るといきなり怒る人がいます。条例には学校、病院、商店、官公庁施設は禁煙ですが、飲食店、ホテルなどは「禁煙、または分煙」と定められている。決められた場所でタバコを吸うのはかまわないのですが、受動喫煙防止条例イコール神奈川全域禁煙と勘違いしている方がいる。これも問題なのです。

 3つ目は、今まで条例の中に織り込めなかった「影響調査」をすべきだと思います。喫煙者数の増減、ルールの遵守状況などの調査が必要です。ルールの面では、かなり進展してきていると思います。私たち喫煙者はほとんど携帯灰皿をもっていますし、路上における喫煙はほとんど見られなくなりました。

 また、飲食店やゴルフ場など、分煙や禁煙をしたことによって経済的な影響を受けた人たちの意見も吸い上げなくてはなりません。県は条例のマイナス面をなかなか認めたがりませんから。

 いずれにしても、これまで罰金を払った例も、取ろうとした例もありません。結局、法的に機能していない。

たばこ税で小学校が一つ建つ


――現状では、受動喫煙という言葉だけが独り歩きしている気がします。

 牧島 そもそも「文化」を通達によって規制しようということ自体に無理がある。精神文化として取り上げていけば、今日のように矛盾に満ちた問題は起きなかったと思いますが、いきなり条例で制定してしまった。

 「公共的空間」「公共的施設」という言い方が一般の人たちにどの程度認識されているでしょうか。病院や学校、公園は公共的空間でしょうが、居酒屋さんを「公共的空間を有する施設」だと思っている人はほとんどいないでしょう。

 ――神奈川県庁に問い合わせてみたところ、「今年の12月くらいまでに条例見直しの方針を決める」とのことですが、現実的な動きはどのようになりますか。

 牧島 まずは審議会委員の選定です。ほかにも、どれだけの審議を重ねるべきなのか、喫煙所の数や税金などテーマ別の議論をどこまで広げるかを決めねばなりません。ただ、先ほど申し上げたように問題点ははっきりしていますので、それを提示していきたいと思っています。

 また、たばこ税について国民的な共感と理解を得る必要性があると思っています。長い間、地方の財源の大きな柱としてたばこ税収益がいかに貢献しているかを国民は意外と知らない。これも一方的なタバコ撲滅論の一端を担っていると思います。神奈川県内の市町村分を合わせるとたばこ税収入は800億円近く。横浜市で280億円、横須賀市で25億円です。

 ところが、一般税なので全体の大きな予算の中に組み込まれてしまい、具体的な金額が見えにくい。わかりにくいものは誤解を受けます。

 たとえば、横須賀市の25億円は、小学校が新しく一つできるくらいの金額なんです。医療費にすれば、中学生までは全部無料になる。ほかには中学校までの給食費を負担する方法もあります。わかりやすく伝えることによって、たばこ税の貢献が見えてきます。いかに人々の生活に直結しているかということを周知すること、そしてタバコは「文化」だという認識を広く理解してもらうことが必要だと思っています。


神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例   神奈川県ホームページ