篠原章(評論家・批評.COM主宰)


 「ドナルド・トランプ候補が次期米国大統領に当確した」との報道に接して、筆者はジョークのつもりで「トランプ当選。翁長知事、オール沖縄は祝電を打たないと」とSNSに書き込んだ(11月9日)。この書き込みに刺激を受けたからではないとは思うが、数時間後、翁長知事はトランプ氏に祝電を打ち、「2月に訪米して新大統領と会談する」と発表した。

 翁長知事がトランプ大統領の誕生を歓迎しているのは、選挙期間中のトランプ氏が「米軍が日本に駐留する必要性はないのだから、日本側が米軍駐留経費を全額負担しないかぎり、在日米軍基地は撤去する」といった趣旨の発言を繰り返していたからである。在日米軍基地の必要性を認めない大統領の誕生は、翁長知事とオール沖縄の「基地反対」にとって「好機」との判断が働いたのかもしれない。
トランプ次期米大統領(ロイター)
トランプ次期米大統領(ロイター)
 しかしながら、トランプ氏は「日米同盟」そのものを軽視しているわけではない。そのことは選挙期間中の発言を精査すれば明らかで、選挙後におけるトランプ陣営の関係者の発言から見ても、問題はあくまで「駐留経費の日本側負担の増額」に限られている。

 トランプ氏は、同盟国との関係を今後も維持するためには、各国による軍事的経費の適正負担が不可欠だと訴えているにすぎない。他方で「強いアメリカ」を確固たるものにするために、最新の軍事技術への投資額を増やす意向だともいわれている。在日米軍駐留経費の米国側負担の削減は、軍備強化のための財源捻出の一環だと考えるのが妥当である。

 もっといえば、トランプ氏の発言は、米国の軍事力にすっかり依存した日本の安保政策に変更を迫るもので、日米同盟下における日本側の財政的・軍事的な役割の増大を促すものと受けとめるべきだろう。「憲法改正による自立」を目指す安倍政権にとって、トランプ氏の方針はむしろ「追い風」となるものだ。トランプ時代を迎えて日米同盟が新しい段階に入ったことは間違いない。