仲新城誠(八重山日報編集長)

 米大統領選で、米軍軍基地の撤退に言及した実業家、ドナルド・トランプ氏が当選し、沖縄では翁長雄志知事や主要な沖縄メディアから「米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設を阻止できるかも」と新大統領の決断に期待する声が上がり始めている。しかし今後、米新政権で問題になりそうなのは辺野古移設の是非どころか、米軍が沖縄から全面的に撤退する可能性だ。そうなれば、中国の脅威に対する処方箋を持たない翁長知事こそ窮地に陥る。

米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、記者団の取材に応じる沖縄県の翁長雄志知事=11月9日午後、沖縄県庁
米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、記者団の
取材に応じる沖縄県の翁長雄志知事=11月9日午後、沖縄県庁
 トランプ氏による選挙期間中の発言のうち、日本にとって最も衝撃的だったのは、米軍駐留経費の負担増に応じない場合、米軍を撤退させる方針を示したことだ。

 新大統領がこの方針を実行すれば、日米同盟は希薄化してしまう。もはや辺野古移設とか駐留経費がどうのという話ではなく、日本が米国抜きで、自分の国は自分で守らなくてはならない時代が来るかもしれないということだ。

 次期大統領は「世界の警察官」の役割放棄、自国の国益最優先主義に言及している。国際社会に冷戦終結以来の大規模な地殻変動が起こるかもしれない。沖縄が備えなくてはならないのは、そのような事態だ。

 しかし米大統領選の結果を受け、翁長知事は11月9日、報道陣にこうコメントした。

「(普天間飛行場問題で)政府は『辺野古が唯一』、私は『ありとあらゆる手段を駆使して基地を造らせない』と言っている。膠着状態の中、私どもの意見も聞いていただいて、どのような判断をされるのか期待したい」

 沖縄は尖閣諸島を抱えており、恒常的に中国の脅威にさらされている。日米同盟が機能しなくなれば、沖縄は圧倒的な中国の軍事力を前に、最前線で突然、しかもたった一人で放り出されることになる。翁長知事のコメントには、そうした問題意識がまるで感じられない。