付け加えるなら、これが税収の少ないほかの道府県であれば、話も違っていただろう。いかに国から補助金を得たとしても、小さくない税負担を市民に求めるのであれば、むやみに高いコストは許容できないからだ。だが、幸か不幸か、東京はお金だけはある。それがおかしなコスト増を加速させた一因だろう。

 だが、一連の問題で、もっとも罪深く映るのは第三の要因、「元首相」「元大蔵次官」といった大物名誉職の存在と「虎ノ門」という伏魔殿である。

 今回の2020年東京五輪で、「国際オリンピック委員会(IOC)」と契約をしているのは、開催地となる「東京都」と「JOC」の二者しかない。重要なところなので念押しで記すが、契約の当事者には「政府」も入っていないし、「組織委員会」も入っていない。
会談を前にあいさつを交わす、小池百合子東京都知事(左)と森喜朗組織委員会会長
会談を前にあいさつを交わす、小池百合子東京都知事(左)と森喜朗組織委員会会長
 そしてIOCから権限委譲をされているのは「組織委員会」なのだが、この組織委員会は東京都の外郭団体で、その出資金の97.5%(約57億円)を東京都が出していた。9月末の報告書が上がってから、組織委員会は東京都に出資金の返還を申し出て、11月末までに57億円は返還される予定だが、それまでの関係で言えば、組織委員会は東京都の下請け機関にすぎなかった。その長が森喜朗氏で、事務総長が大蔵事務次官だった武藤敏郎氏である。 

 構造的に言えば、組織委員会は東京都の意向を汲み、東京都の方針のもと動くべき存在だったはずである。だが、これまでの報道から浮かぶのは、組織委員会は都との連携を密にしているわけでもなく、ほぼ個別に活動をしてきたような状態だった。なぜなら(五輪後にも有形無形で貢献するという)「レガシープラン」では東京都と組織委員会のそれぞれで別々のものがつくられていたのである。いかに連携がなかったかがうかがえる。

 そうした問題が露見していく中で、大物名誉職の人たちはいったい何をしていたのか。90年代半ば、霞が関で官僚問題が出てきた後、猪瀬直樹氏が『日本国の研究』(文藝春秋)として引っ張りだしたのが、虎ノ門という地区に潜む特殊法人の問題だった。

 官僚は事務次官を目指す出世レースに落ちこぼれると、定年前に退職していく。その先に就くのが天下りとしての特殊法人だった。各省庁にひもづいて予算をもらい、ちょっとした事業を請ける。民間企業であれば3日で終わるような事務仕事を1カ月かけて行う。それだけ生産性が低いにもかかわらず、理事への報酬は年数千万円が支払われる。こうした仕組みが「虎ノ門」問題だった。