荻原博子(経済ジャーナリスト)

 「2020年東京五輪は、神宮の国立競技場を改築するがほとんど40年前の五輪施設をそのまま使うので世界一カネのかからない五輪」になると猪瀬直樹元知事が断言したのが4年前。しかも、東京五輪の開催計画を記した立候補ファイルでは、組織委の運営費は約3013億円。ここに国などの負担分を加えても、約8000億円程度でした。

東京開催が決まり、喜ぶフェンシングの太田雄貴(手前右)ら。
歓喜の輪が広がった=2013年9月7日、アルゼンチン・ブエノスアイレス
東京開催が決まり、喜ぶフェンシングの太田雄貴(手前右)ら。 歓喜の輪が広がった=2013年9月7日、アルゼンチン・ブエノスアイレス
 ところが、この予算がいつのまにか膨れ上がり、小池百合子知事の都政改革本部の調査チームによれば、「3兆円」を超える可能性もあるとのこと。この都政改革本部の提言に対して、大会組織委員会は次のようにコメントしています。「立候補ファイルの8000億円が、巷間言われている2兆円、3兆円に膨らむのは、組織委員会の責任ではないかという意見がありますが、そもそも立候補ファイルは東京都と招致委員会が作成したものであり、加えて上記のとおり8000億円と『2兆円、3兆円』の内容は全く異なりますので、これらを比較する意味は全くありません」と、まるで巨額な出費となったのは我々のせいではないと言わんばかりのコメント。当初、招致委員会から出された予算内でできなくなってしまった責任は、誰がとるのでしょうか。

 さらに「開催都市や開催国の経費は、恒設施設の整備が中心で、テロ対策や公共交通輸送など運営に関係する行政経費はカウントされていません。ロンドンでも、これらの経費が9500億円に上ります」とあります。だったら、それも含めてもっと早く「実際には、○○○くらいかかりますよ」と言うべきでしょう。しかも、ロンドン並に恒設施設の整備が中心で、テロ対策や公共交通輸送など運営に関係する行政経費がかかったとしても、約1兆7000億円。3兆円超えと言われる予算の約6割で、残り1兆3000万円はどうなっているのでしょうか。

 問題は、小池知事が言うように誰も予算のことを考えず、責任を取るリーダーも予算を仕切る財務部長も不在で、みんなが自分のやりたい放題しているということ。けれど、そのツケを払うのは、都民や国民です。だとしたら、「五輪などいらない」という人もたくさんいると思います。

 ちなみに、ブラジルのリオデジャネイロ五輪では財政が逼迫した行政が、多額の費用を要する五輪の聖火リレーよりも市民の生活が大切だとして、18万レアル(約560万円)の運営経費を市民生活に回し、聖火リレーを辞退しています。このまま予算が膨張し続けると、東京五輪もこうした状況に見舞われるかもしれません。