(THE PAGEより2013年9月19日分を転載)
 2020年に開催が決まった東京五輪について、その経済効果が話題になっています。官民が独自に試算した経済効果の規模は3兆円から150兆円まで大きな幅がありますが、過去に行われた海外の五輪の経済効果はどうだったのでしょうか。

東京五輪(右)・パラリンピックを記念して発行される千円硬貨
=9月28日、大阪市北区の造幣局
東京五輪(右)・パラリンピックを記念して発行される千円硬貨 =9月28日、大阪市北区の造幣局
 東京都が試算した2013年~2020年までの7年間の経済波及効果は、日本全体で約2兆9600億円です。その内訳は、観光や広告などサービス業が6500億円、建設業が4700億円、商業が2800億円となっています。

 一方、民間の見方はもう少し強気で、SMBC日興証券では経済効果を4.2兆円と計算しています。これは観光や飲食の消費額を大きく見積もったためで、そのぶん鉄道やタクシーなどへの波及効果も増え、全体の金額を押し上げています。このほか経済効果を150兆円と試算するエコノミストもいます。

 では、近年他国で行われた五輪での経済効果はどのくらいだったのでしょうか。単純比較できるデータがないので参考程度ですが、英国政府は今年7月、2012年ロンドン五輪開催後の1年間の経済効果が総額99億ポンド(約1兆5000億円)に達したと発表しました。2008年の北京五輪では、建設投資が約2800億元(約4兆4800億円)に上ったと報じられています。


英政府発表「1兆5000億円」に疑問も


 ロンドン五輪の99億ポンドの内訳は、各国要人や企業への投資誘致・輸出促進活動によって対英投資が25億ポンド、売上高が59億ポンドそれぞれ増加。さらに五輪関連業務を手掛けた実績が評価され、14年にブラジルで開催されるサッカーのワールドカップなどの海外イベント関連で、英企業が計15億ポンドの契約を獲得したそうです。一方で、2020年までに280~410億ポンドの経済効果が見込まれるとの民間調査機関の試算もあります。

 ただし英国政府発表の経済効果については、五輪がなくても生じたであろう数字が含まれているのではないかという疑問が出るなど、地元メディアでは必ずしも額面通りには受け止められていません。BBCは、ロンドン以外では「期待していたほど契約が増えていない」とする中小企業団体の不満を伝えています。

 北京五輪の場合、開催決定翌年の2002年から開催前年の2007年の間に、インフラ関連などの投資が毎年GDP(国内総生産)成長率を0.3~0.4ポイント押し上げたとされています。北京市に限れば毎年関連投資が100億元程度行われ、GDPを1~3ポイント押し上げたと見られています(みずほ総合研究所の2008年8月のレポート)。

 もっとも、中国の場合、五輪開催の前年に14%を超えた経済成長率が、開催年と翌年は9%台に鈍化しました。2004年のアテネ五輪開催に約1兆4300億円の費用をかけたとされるギリシャの場合も、五輪後に経済にブレーキがかかり、今は債務問題で国中が大混乱しています。これらの結果からは、五輪開催後に必ずしもその国の経済が良くなったわけではないという現実が伺われます。

 すでにインフラが整っている先進国は、途上国ほど投資は伸びず、また経済規模が大きいので、五輪による経済波及効果の恩恵も少ないという見方もあります。むしろ五輪開催は巨額投資を伴い、企業の生産や消費を活発化させて景気浮揚が見込める一方、国の財政負担が過大になれば、国民につけが回る懸念もあるという指摘もなされています。