進撃を続ける小池百合子・東京都知事。一方で小池新党の影に怯える自民党は小池氏最大のブレーンで「都政改革本部」特別顧問の上山信一・慶応大学教授を追及の標的に定めつつある。
東京都特別顧問の上山信一慶応大教授
東京都特別顧問の上山信一慶応大教授
 都政記者は「上山顧問には2つの大きな失策がある。五輪調査チームのリーダーである上山氏は村井嘉浩・宮城県知事と同郷で、ボート競技会場を宮城に持っていこうと小池・村井会談を根回しした。自民党も共産党もそのやり方を“まさにブラックボックス”と批判している」と、語る。小池氏が都知事選の際に東京都議会自民党のあり様を「ブラックボックス」と批判したが、それがブーメランのように戻ってきている。

 もちろん、小池氏も手をこまねいているわけではない。自民党とは逆に、「小池劇場」を盛り上げることで来年7月の都議選本番までに4000人を超える希望者を集めた小池政治塾の第2次、第3次応募者を5000人、1万人と増やしていけるかが勝負になる。

 形勢が不利になれば新たな“悪役”をクローズアップさせることで国民の支持を保つのが小池氏が小泉純一郎・元首相から学んだ「劇場型政治」の手法だ。

 ターゲットにしたのは石原慎太郎・元知事。石原氏は豊洲の盛り土問題で公開ヒアリングを求められていたが、それを固辞して都の質問に文書で「細かいことは覚えていない」などと回答していた。

 小池氏はその石原氏に改めて経緯の聞き取り調査に応じるように要請し、豊洲の盛り土疑惑の“犯人捜し”に焦点をあてる方針だ。

 都議会にもカウンターパンチを用意している。「都議の報酬半減」条例である。9月からの都議会では小池氏の選挙公約だった「知事給与半減」条例が全会一致で成立し、都知事の年収を2896万円から約1448万円に引き下げた。その結果、東京では都議の報酬(約1708万円)の方が知事より高いという逆転現象が生まれている。

 小池氏は先に自分の給料を引き下げたうえで、都議選を前に4000人の塾生が「都議も半額に下げるべき」と主張して有権者に都議の報酬がいかに高過ぎるかを訴える作戦だ。自民党都議に対する“兵糧攻め”になる。政治塾を運営する政治団体「都民ファーストの会」会計責任者の音喜多駿・都議がこういう。

「都議の報酬半減は都議選に向けた争点になっていくでしょう。自民党はなんとしても半減を阻止したいでしょうが、知事給料の半減条例には賛成しながら、自分たちの報酬引き下げは嫌だと抵抗すれば都民の批判を浴びるはずです」

 知事給料半減を認めた段階で、自民党都議たちは小池氏の“仕掛け”に嵌っていたのだ。そして五輪の会場見直し問題での小池氏の“切り札”が、見直しに強硬に反対する“五輪のドン”森喜朗・元首相(五輪組織委員会会長)への辞任勧告だろう。

 すでに布石は打たれている。森氏は都政改革本部が五輪の会場整備計画の見直しを求めたことに「極めて難しい」と反対した(9月29日)。それが報じられると上山氏がツイッターでこうつぶやいて“会長交代”を求めたのだ。

〈おっしゃるとおりだが、無理ならほかの人に頼んだらいかが?〉

 五輪見直し問題がいよいよ膠着状態に陥り、事態打開のために小池知事が自ら森氏の組織委員会会長の退任を迫れば、小池VS森の頂上作戦で小池劇場が盛り上がり、求心力を盛り返すことは間違いない。だが、それは官邸の思う壺でもある。自民党大臣経験者が語る。

「安倍総理や麻生副総理、菅官房長官にとっても森さんは目の上のたんこぶ。小池氏がクビ取りに動いてくれるなら好都合と考えている。しかも森さんのことだから激しく抵抗して都知事側も返り血を浴びるはずだ。

 小池氏は第1次安倍内閣の防衛大臣時代に“防衛省の天皇”と呼ばれた守谷武昌・次官を更迭し、総理に相談もないまま大臣留任はしないことを表明した。安倍総理はあのときの小池氏のやり方を“任命権者のオレの面子を潰した”といまも許していない。森さんと相討ちになれば、あのときの借りも返すことができる」

「小池劇場」の演目は熱しやすく冷めやすい「4000人のなかまたち」の動向によってエピローグが大きく変わる。

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