片山修(経済ジャーナリスト)

 米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利は、日本の経済界に衝撃を与えた。最大の懸念は、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など、トランプ氏の保護貿易主義の姿勢だ。
 オバマ米政権は11日、任期中のTPPの議会承認を見送る考えを明らかにした。トランプ氏との対立を防ぐためだ。これにより、世界の国内総生産(GDP)の4割を占める巨大経済圏確立の道筋はほぼ閉ざされた。

 さらに気がかりなのは、米国がカナダ、メキシコと結んでいる北米自由貿易協定(NAFTA)の行方だ。

 かりに、米国がNAFTAから離脱するとなれば、カナダやメキシコから無関税で米国に製品を輸出することはできなくなる。米国内からメキシコに生産拠点を移管してきた日本の自動車メーカーは、北米戦略そのものを大幅に見直さざるをえない。窮地に陥るわけだ。

 トヨタ自動車は、メキシコでピックアップトラック「タコマ」を年8万2000台生産している。19年の稼働に向けて、メキシコ・グアナフアト州に生産能力20万台の新工場の建設も進行中だ。

 日産自動車は、メキシコに2つの工場をもつ。生産台数は、55万5000台と31万6000台だ。16年までにメキシコの生産能力を年100万台に引き上げる計画である。

 ホンダは、メキシコに2つの工場をもち、米国向け「フィット」など、合計28万台を生産している。

 また、マツダは、メキシコ・グアナフアト州の工場で米国向け「Mazda3」(日本名マツダアクセラ)など、28万台を生産している。

 加えて、日本の自動車メーカーの完成車工場の周辺には、デンソー、日本精工、リケンなど、多数の自動車部品メーカーが進出している。その中には、中小企業も少なくない。

 では、日本の自動車メーカーにとって、「トランプ・ショック」は文字通り危機そのものなのか。北米戦略は見直さざるを得ないのか。80年代の日米貿易摩擦のように日本車はやり玉にあげられるのだろうか。