山田順(ジャーナリスト)

 まず、こう、言わせて欲しい。ヒラリー・クリントン候補が間違いなく勝つと予測してきた人間が、トランプ次期大統領がどんな経済政策を取り、それによって日本がどんな影響を受けるかを予測していいものかと。
ニューヨーク証券取引所(ロイター)
ニューヨーク証券取引所(ロイター)
 それでもあえて予測するとすれば、トランプ氏はバブルを起こす。すでにその兆候は始まっているが、彼の大統領就任後のバブルはいま以上のものになるだろう。少なくともNYダウは2万ドルを超え、円は1ドル=125円を軽く突破するだろう。原油価格が上がるということは当分ありえない。

 なぜ、そんなことが言えるのか? それは、トランプ氏にはアメリカをアメリカたらしめている伝統的な価値観、政治思想、理念などがまったくないからだ。自由と平等、基本的人権、民主政治などがアメリカの普遍的価値観である。歴代アメリカ大統領は、これを守って政治を行ってきた。

 しかし、トランプ氏の頭の中には「アメリカ第一主義」(America First)による「偉大なるアメリカの復活」(Make America Great Again)しかない。 

 トランプ氏は、ビジネスマンらしく愛想は格別にいい。実際、トランプタワーに飛び込んできた安倍首相一行を満面の笑顔で迎えている。彼は誰に対しても「ウィン・ウィンの関係を築いていこう」と言い、「ディール」(取引)という言葉が大好きだと語る。

 つまり、誰とでもうまくディールできればいいと思っている。そして、政治もビジネスと同じと考えている節がある。つまり、彼が言う「アメリカ第一主義」というのは、アメリカが儲かればいいということだ。そのために、グッドディール(いい取引)を積み重ねていこうということだけだ。

 とすれば、これが政策と言えるだろうか。政治を一つの思想、理念で行うことは正しい選択ではない。しかし、思想も理念もない政治もまた、正しい選択とは言えない。

 その結果、これまで彼が述べてきたこと、特に経済に関することには論理的な裏付けがなく、ひとつひとつに整合性がない。それでもあえて要約すると、国内的には史上最高のバラマキをやり、対外的には保護主義政策を取るということになる。

 すでに、この保護主義政策の動きの一つとして、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱が11月21日に宣言された。来年1月20日の大統領就任初日に即通知するという。同じく、TTIP(環大西洋貿易投資協定)からも離脱するだろう。