THE PAGEより転載)
 次の米大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は、選挙期間中に在日米軍の撤退に言及するなど日米関係についても“型破り”な発言が目立ちました。トランプ氏はどのように外交を展開していくのか。オバマ政権が掲げたアジア重視の外交安保政策はどうなるのか。米国政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に寄稿してもらいました。

「内向き」か「強い米国」か


 トランプ新政権の外交・安全保障政策はどこに向かうのだろうか。特にアジア太平洋政策や日米同盟について考えてみたい。

 当選から間もない現在、トランプ外交の基本路線を読むのはなかなか難しい。「米墨国境の万里の長城建設」や「ムスリム入国禁止」といった選挙戦のハチャメチャな政策ともいえないような政策は目立ったものの、実現性を考えると、これは支持者を固めるためのスローガンといえるようなものかもしれない。外交は言葉のゲームでもあるため、そのことは問題だ。ただ、今回は「暴言」以外の部分で読み取れるトランプ外交の方向性を考えてみたい。
会談前、握手を交わす安倍首相とトランプ次期米大統領(内閣広報室提供・共同)
会談前、握手を交わす安倍首相とトランプ次期米大統領(内閣広報室提供・共同)
 具体的には次のような3つの傾向が高くなるかもしれない。

 第1点目はビジネスマンとしてのトランプの性格である。オバマ政権では、軍事力よりも話し合いを重視し、単独行動ではなく、多国間での協調主義を重視する傾向が続いた。トランプの場合、おそらくビジネスマンらしく2国間の協議をし、話し合いをまとめていく手法を進めるのが得意かもしれない。パリ協定やTPPに代表されるような多国間で物事を進めていくような枠組みではなく、できる限り相手と1対1で取引をし、最大限のメリットをアメリカにもたらせようとするような外交の方向性が予想される。オバマ政権ではスローガンのように何度も登場したが、結局大きくは進まなかった核軍縮もトランプ政権ではどうなるのか、不透明である。実利的な「ディール」(取引)がキーワードである。

 第2点目はポピュリストとして、外交・安全保障上の世論の影響が大きくなる可能性である。国民の間には、中東に介入に対して、極めて強い厭戦気分がまだ続いている。体力以上にイラク戦争や、アメリカの歴史上もっとも長い戦争となっているアフガニスタン戦争を進めた結果、アメリカの海外での威信の低下や、国力そのものの低下を招いたという意識がアメリカ国民には強い。この世論を背景に、「アメリカは世界の警察ではない」と繰り返し公言したオバマ大統領と同じ、あるいはそれ以上に、どちらかといえば内向き路線が目立つことになるかもしれない。ここでは「世論」がキーワードである。