碓井真史(新潟青陵大学大学院教授)

 違法薬物を使うなど、とても愚かなことだと人々は思う。ましてや社会的に成功した人が、そんな悪いことをするなど常識的に考えられないと思う。しかし実際は、社会的成功者たちが次々と違法薬物で逮捕される。しかも、繰り返し。

 2年前、CHAGE and ASKAのASKAが逮捕された時は衝撃的だった。判決は懲役3年、執行猶予4年の有罪判決。その執行猶予中に今回の逮捕は起きた。報道によれば、尿から覚醒剤反応が出ているという。普通なら、せめて執行猶予中は静かにするものなのに。多くの人が彼を支え、仕事も再開しようとしていたのに。だが、覚醒剤犯罪の再犯率は7割。彼もその一人になってしまったのだろうか。

 人はなぜ薬物犯罪を繰り返すのか、容疑が事実とすれば、ASKAはなぜまた覚醒剤を使ってしまったのだろうか。
2014年8月28日、ASKA被告(本名・宮崎重明)初公判で傍聴券抽選の整理券(リストバンド)を求めて並ぶ人々=午前、東京・日比谷公園(撮影・古厩正樹)
2014年8月28日、ASKA被告(本名・宮崎重明)初公判で傍聴券抽選の整理券(リストバンド)を求めて並ぶ人々=午前、東京・日比谷公園(撮影・古厩正樹)
 前回の逮捕、判決時、ASKAは深い反省を示していた。覚醒剤をやめたいし、やめなければならない。しかし、自分の意志だけではできない。医師の力を借りて、しっかり薬をやめたい。そうASKAは語った。見事な、模範的発言だ。妻も、しっかり夫を支えると語っている。多くの仕事関係者、ファンの支援も期待できた。病院にも入院し、自助グループにも入った。しかし、彼は再び逮捕された。

 判決時、ASKAがどのような本心を持っていたのかはわからない。だが、この模範的すぎる発言は、あるいは用意されたものだったのかもしれない。あるいはウソではなかったが、表面的だったのかもしれない。たしかに、薬物使用は本人の意志の力だけでは治らない。意志の力で熱を下げたり、下痢を止められないのと同じだ。

 薬物依存者は、自分の無力さを知り、だからこそ医療や自助グループの力を借りなければならない。意志の力だけでは無理なのだ。だが、治したいという強い動機づけは必要だ。ASKAには、どの程度の本気があったのだろうか。

 入院したASKAは、優れた治療を受けている。規則正しい生活を送り、体力も取り戻した。薬物依存症者によると、薬物をやめること自体はそれほど難しくはないと言う。入院したり、逮捕されたりすれば、薬はやめられると。しかし、薬を生涯にわたってやめ続けることは、至難の技だと言う。

 ASKAは薬物依存症更生施設のDARC(ダルク)にも入っている。ダルクのクリスマスパーティで「SAY YES」を熱唱したなどとも報道された。この報道は、頑張っているASKAに対する好意的報道だろう。