原田隆之(目白大学教授)

 ASKAさんが再度逮捕された。執行猶予中の逮捕であるので、実刑は免れないだろう。しかも前回の懲役3年の刑と今回科せられる刑と合わせて、いわゆる「2刑持ち」での受刑となるので、5年近くは刑務所に入る可能性が大きい。

 逮捕時のエピソードによると、彼は「盗聴・盗撮されている」という「被害」を訴えて、自分で通報したということである。こうした主張は以前から見られたようで、覚醒剤精神病による幻覚妄想状態にあったことが推察される。盗聴・盗撮されているというのは、覚醒剤による妄想としてはありふれたものである。

 それにしても、メディアの狂乱ぶりには呆れ返るしかない。自宅前にはマスコミ関係者が大挙して押しかけ、生放送ではレポーターが得意げに本人に電話してみせた。さらに、タクシーの運転手は平気でドライブレコーダーの映像を売り渡し、局も平気でそれを垂れ流す。まるで国家転覆を目論んだ極悪人か何かのようで、彼には人権の欠片もないと決めつけ、国を挙げて責め立て貶めているかのような有様だ。
捜査員に付き添われて警視庁に向かうASKA容疑者(右)=11月28日、東京都目黒区
捜査員に付き添われて警視庁に向かうASKA容疑者(右)=11月28日、東京都目黒区
 そしてそこで繰り返されるのは、「なぜ彼はまたも過ちを繰り返してしまったのか」という問いである。一時は日本の芸能界の頂点を極めたトップスターであり、当時ほどの勢いはないとしても、今なお多くのファンがいる大物ミュージシャンである彼が、どうしてすべてを無にしてしまうような愚行を繰り返すのだろうか。

 何も失うものがない人間ならば、再犯に至ってもそれはある程度理解できるかもしれないが、支えてくれる家族がいて、まだ辛うじて仕事も社会的な地位もある人間が、なぜあえてそれを失うような真似をするのだろう。

 答えは簡単である。それは覚醒剤だからだ。彼が乱用したのは覚醒剤であって、覚醒剤はそのような薬だ。あらゆる違法薬物の中でも、トップクラスの依存性を有し、一度使ってしまっただけでも、「脳が作り替えられる」くらいの破壊的な作用を有するのが、覚醒剤という薬物である。

 脳には大脳辺縁系という部位があるが、覚醒剤を使うとそこに強力な「快感回路」が作られ、覚醒剤を求めて止まない脳になってしまう。したがって、ひとたびこの薬物を使ってしまえば、大物歌手だろうが一般人だろうが、有名だろうが無名だろうが関係なく、覚醒剤依存症になってしまう危険性が大きいのである。