覚せい剤事犯にとって、家族などの監督者の存在がどれほど大きいか、如実に示すデータがあります。

 下のグラフは、覚せい剤事件で執行猶予判決を受けた519人について、判決から4年以内の再犯状況を調べた調査結果(平成21年版犯罪白書より)のうち、裁判の際に家族などが今後の指導監督を約束した人がいたかどうかを調べたものですが、指導監督を約束した人がいたケース(519人のうち403人)では、猶予判決を受けた後の覚せい剤再犯はわずか18.9%。いっぽう裁判時に監督を約束してくれる人がいなかったケース(519人のうち116人)では、44.8%が覚せい剤再犯に及び、その他の罪名による再犯も含めると、およそ2人に1人が再犯に及んでいるのです。
覚せい剤事犯者の執行猶予判決後の再犯状況(監督誓約の有無別) 平成21年版犯罪白書249頁より転載
覚せい剤事犯者の執行猶予判決後の再犯状況(監督誓約の有無別) 平成21年版犯罪白書249頁より転載
 刑事裁判に関わる法曹関係者は、家族など身近な監督者の大切さを実感しているだけに、長年にわたる乱用で家族を裏切り、苦しめてきた被告人が、家族と和解し、執行猶予後の生活を共に分かち合える状態になっているかどうかが気になります。被告人が家族の監督に従うか、家族の側に被告人を監督する意欲があるか、こうした点を見極めることが重要なのです。

 私が弁護人として事件を担当する際には、被告人本人よりも、むしろ家族に対してより多くの時間を割くことさえあります。

 こうした具体的な解決策を丹念に仕上げたとき、公判の席上で、被告人は胸を張って「過去の自分と決別し、再出発します」と誓い、弁護人は「被告人に再犯のおそれはない」と言い切ることができるのです。

 執行猶予期間は、裁判確定の日から1年以上5年以下とされています(刑法25条1項)が、私の担当した事件では中間の3年というのが最も多かったようで、これが標準だと思います。2年というケースもありましたが、数件です。2年に比べれば、4年という事件は、結構ありますが、犯情に若干問題があったケースが多かったようです。多いに問題があり、再犯のおそれが強ければ、5年になったり、保護観察が付いたりします。

 本件についてみれば、裁判官は、最後に説示したようにASKAさんが人の意見を聞かないこと(マスコミ報道によれば)に不安を持ち、再犯のおそれが若干高いと判断したのでしょうか。もっとも、実務では、宣告刑より短い猶予期間を定めることは行われていないとされているので、その観点からみれば、宣告刑が懲役3年の本件では、4年は標準的な期間で、格別問題はないということもできるかもしれません。

[参照]
①グラフを引用した、覚せい剤事犯者の執行猶予判決後の再犯状況(再犯ありは154人で29.7%、うち覚せい剤取締法違反による再犯は128人で24.7%)の詳細は下記で読むことができます。
平成21年版犯罪白書 第3章 第1節

②覚せい剤事犯者の再犯状況については、次の過去記事をご参照ください。
過去記事「覚せい剤と再犯」 2012年11月26日