大相撲九州場所、豪栄道の綱取りは果たせず、鶴竜の優勝で今年の相撲は幕を閉じた。またモンゴル勢に賜杯を握られたが、相撲界の潮流は大きく動き始めた。白鵬一強時代から波乱の時代へ。今年は、白鵬ほか、琴奨菊、日馬富士、豪栄道、そして鶴竜と五力士が優勝した。うちニ力士が日本人というのも大きな変化と言っていいだろう。

豪栄道を下し、7場所ぶり3度目の優勝を果たした鶴竜=福岡国際センター
豪栄道を下し、7場所ぶり3度目の優勝を果たした鶴竜
=福岡国際センター
 なぜモンゴル勢が強く、日本人力士が叶わないか。モンゴル勢のハングリー精神を指摘する声もあり、また日本の生活様式の変化を指摘する声もある。中でも「和式トイレがなくなり、洋式が大半になった」、これが大きいとの指摘は少なくない。ことに相撲などは足腰が基本だから、影響は深刻だという。最近の日本の子供たちにしゃがむ姿勢を取らせてもできない子が大半だ。そのまま後ろに倒れてしまう。これでは相撲どころではない。相撲の基本になる蹲踞の姿勢が取れない日本人が多い現状で、「日本人は相撲が得意なはずだ」と言っても無理な話だ。琴奨菊、豪栄道は子どもの頃から相撲に親しんでいた力士だから、かつて日本人同様、しゃがむ姿勢は「わけない」方だろう。では、稀勢の里はどうか?

 綱取りの最右翼と目され、期待を浴び続ける稀勢の里が今年も優勝に届かなかった。もう稀勢の里には期待しないといったあきらめムードもファンの間には広がりつつある。ところが、一年を終える九州場所の千秋楽を迎えて、「稀勢の里の綱取り」の話題がにわかに浮上するという意外な現象が起こった。八角理事長が稀勢の里に言及して、「来場所、内容のよい相撲で優勝したら横綱昇進の推挙もあり得る」との考えを示したのだ。

 それは、稀勢の里が今年の「年間最多勝」に輝いたことへの評価だ。優勝こそできなかったが、今年は4場所で、優勝に次ぐいわゆる準優勝の好成績を重ねた。その安定感は際立っていた。加えて、九州場所では、優勝した鶴竜に唯一の土をつけたほか、白鵬、日馬富士、3横綱全員を倒した。「横綱以上」の実力を堂々と実証したのだから、綱への期待が俄然現実味を帯びるのも当然といえば当然だ。というわけで、次の平成29年初場所は「稀勢の里の綱取り」が最大の注目になりそうだ。

 さて、そうなるとファンならずとも気になるのが「稀勢の里の勝負弱さ」だ。これまでも綱取りのチャンスがありながら、勝負のかかった大一番では別人のようにもろさを露呈し、大観衆のため息を巻き起こしてきた。そういう力士でも、いざとなると何かの力を得たように一世一代のたくましさを発揮するのがこれまで横綱昇進を果たした力士ひとつのパターンだが、稀勢の里についぞそのような「変身」が見られない。