藤本貴之(東洋大学准教授・博士/メディア学者)

 医療系情報を大量に配信していたキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」騒動に端を発し、DeNA社が運営するすべてのキュレーションメディアが非公開になった一連の問題から、「ウェブメディアの信頼性」や「メディアの責任」に大きな注目が集まっている。

 本年9月に、人工透析患者に対して「自業自得だ!死ね!」と暴論を書いたことで炎上し、1ヶ月足らずで、ほぼ全ての仕事を失ったフリーアナウンサー・長谷川豊氏のように、ウェブメディアに端を発してリアル社会の人事やビジネスに影響を与える事例も近年、急増している。

 本稿では、メディア学者をしつつ、実際にこれまで複数のウェブメディアの開発・運営(例えば、メディア批評サイト「メディアゴン」)に携わってきた筆者の研究・実務の両面の視点から、今回の「WELQ騒動」を通して見えてくるキュレーションメディアを中心としたウェブメディアが持つ課題、問題について考えてみたい。

謝罪会見したディー・エヌ・エーの守安功社長と南場智子会長(右)
=12月7日、東京都渋谷区
謝罪会見したディー・エヌ・エーの守安功社長と南場智子会長(右) =12月7日、東京都渋谷区

ウェブメディアの自由度と責任


 これまで、ウェブメディアといえば、その機動性の高さと自由度から、急激に情報源としてのニーズを伸ばしてきた。テレビを見ない層・新聞を読まない層の急増は、それ自身の質や魅力の低減もさることながら、情報源のウェブ化があったことは否めない。

 ウェブメディアがテレビや新聞といった既存メディアにも並ぶ影響力や消費を生み出すようになった一方で、そこにはテレビ業界のような明確な法規制や業界規制はない。公序良俗の遵守や信頼性の確保といった部分は、あくまでも運営者・発信者の良識と感覚が大きく左右してきた。記録が残るとはいえ、新聞などとは違い「瞬時に削除や修正」が可能である点も運営者の緊張感を緩ませる要因になっているように思う。

 高い自由度が生み出す「信頼性は低いけど面白いコンテンツ」を拡散させることで影響力を確保しつつも、「所詮ウェブですから」といった意識と逃げ道を設けることができる仕組みは、ウェブメディアの大きなメリットの一つだ。既存メディアでさえ、敵視しつつもウェブメディアの世界に進出し、保有していることからもそれは明らかだ。