宮脇睦(ITジャーナリスト)

 グーグルはコンテンツの内容を精査しない。グーグルの検索順位決定の仕組みを単純化するとこうだ。多くのサイトからリンクを貼られたコンテンツは、それだけ人気=価値があると評価する。いわゆる「美人投票」と同じだ。何を説明しているコンテンツかは、掲載されているキーワードによって分類する。これを逆手にとれば、グーグルの検索結果は「操作」できる。これを「SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)」と呼ぶ。

 21世紀の初め頃、女性タレントの名前での検索結果に、アダルトサイトが並んでいたのはSEOの悪用による。プロ野球球団「横浜ベイスターズ」のオーナーとして知られる東証一部上場企業「DeNA」が運営する医療系サイト「WELQ(ウェルク)」の手口も同じだ。

 「死にたい」との検索結果の1位にWELQのコンテンツが表示されていたのだが、鬱病患者を追い込みかねない不適切な内容を孕むものだった。転職サイトへ誘導して利益を得るためのものだったのだ。心の弱っている人に目をつけ、金儲けを目論んでいたのだからアダルトサイトより悪質だ。

 2016年10月24日、SEOの専門家である辻正浩氏が当該コンテンツの問題点をまとめて指摘しネットで話題となる。批判を受けDeNAは10月26日に、広告部分を削除したが、コンテンツは会員による投稿で、会員規約に違反していないため削除も修正もしないと発表する。WELQはサイトに登録した会員からの投稿で運営されていると説明していたが噴飯物の仕組みがそこにはあった。

 会員という言葉は、善意の第三者的な一般市民を連想させるが、外部発注仲介サイト「クラウドワークス」などを通じて集めた「ライター」なのだ。「クラウドワークス」を介してライターとなり、執筆した人物のブログによれば、執筆方法についての細かな指示がだされており、DeNAの監督下にあったのだ。ネット媒体「buzzfeed」は、独自入手したDeNAが構成まで指示する「マニュアル」を公開している。「会員」とすることで、記事への責任を回避していたと見るのが自然であろう。ここにも悪質さを確認する。

 会員と称するライターへの報酬は1文字0.5円。400字詰め原稿用紙1枚で200円だ。クラウドワークスが募集する「ライター」職には、0.2円というものもあり、これでは80円にしかならない。筆の進みに個人差はあるが、0.2円では最低時給を上回ることすら現実的ではない。下請け業者であるライターに、労働基準法は適用されない。脱法的ブラック企業の臭気が鼻をつく。