「暴露記者」の存在は、実はジャニーズについての報道が「御用記者」が中心になってしまっていること裏返しだ。「御用記者」といっても、実際に事務所側が何かを直接コントロールしているのではない。ジャニーズを批評する上で、多くのメディアが自ら「“事務所のあり方”に触れるな」などと事前に注意を与えることが多い。いわゆる自主規制だ。筆者も昨年の「独立」問題から今回の解散まで、この種の注意を何度も言われたことがある。

岩手産リンゴ「冬恋」を来場者にプレゼントするのん=8日、東京都内
 またSMAP解散報道が、あたかも事前に示し合わせたように、各スポーツ紙などで一斉に行われた「談合」的事実も周知のことだろう。メディアのジャニーズ事務所への「配慮」は極端に思える。他方で、メンバー個々への人間関係に焦点をずらすことで、事務所とメンバーとの対立は報道の場から消えてしまっている。非常にアンフェアな状況に思える。

 さらに日本の芸能界特有の構造的問題がある。これはジャニーズ事務所固有の問題ではない。日本のアイドルやタレントたちが事務所と揉めると、多くの場合、その後の芸能界から「干される」ことになる。事務所とアイドル・タレントが(法的な問題も含めて)揉めても、他のテレビやラジオなど他の企業には一般的には関係のないことだろう。もし揉めていることが(媒体イメージを損なうなどで)問題であるならば、アイドルやタレント側だけではなく、その事務所自体への仕事の依頼も取りやめるのがまだしもフェアだ。だが、実際にはアイドル側しか「干される」ことはない。

 例えば、国民的なブームになったNHK朝ドラ『あまちゃん』の主役を演じた能年玲奈(現在の芸名:のん)にかかわるケースはこの典型だ。彼女の所属していた旧事務所との確執が報道され、それが現在も尾を引いていて、テレビやラジオなどへの出演が抑制されてしまっているというものだ。実際に彼女に言及することを自粛するように求められたメディア出演者の証言もある。

 ひとつの事務所がいくらその権威が大きくても、メディア全体に影響を及ぼすことは不可能だ。だが、ひとつひとつの事務所の権力が小さくとも、それらが一群となって交渉力を発揮すれば問題は別である。例えばフリーライターの星野陽平氏は、『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)の中で、各事務所がタレントの引き抜き禁止、独立阻止の協定を結んでいて、談合していると指摘している。この談合した独占的な交渉力がもし本当だとすれば、芸能界だけではなくメディアの報道は、わたしたちのメディア受容のあり方を過度に歪めてしまうだろう。

 SMAPの件でこの独占的な交渉力に関わる事実を確証することは現時点ではできない。ただ一般的な意味で、このような芸能界の構造的体質が存在するとすれば、アイドルファンに損失をもたらすことは明白である。また多くのタレントたちは事務所から独立する自由、つまり職業選択の自由を持つことができなくなる。

 今回のSMAP解散に至る報道で、海外からは現代の奴隷制なる批判も寄せられたが、その背景には日本の芸能界の談合の構造があると指摘されている。SMAPの解散と同様の国民的悲しみが繰り返されないためにも、このメディア・芸能界の構造的問題の批判的検証が必要だろう。