加谷珪一(経済評論家)

 将来の話と思われていた車の自動運転が現実的な段階に入ってきた。フォードなど米国勢は2021年の市場投入を目指して完全自動運転車の開発を進めている。日本でも2025年頃には完全自動運転が実現する可能性が高い。

 自動運転車の普及は、社会に大きな変化をもたらす。自動車メーカーやタクシーなど直接的に影響を受ける業界はもちろんのこと、損害保険会社、小売店・飲食店といった自動車業界以外の経営環境も激変することになるだろう。

 自動運転の普及によって、高齢ドライバーによる暴走事故や飲酒事故を一掃できると期待する声がある一方、人が運転しないクルマに対する抵抗感も根強く、コンセンサスの確立には時間がかかるとの見方もある。

 日本では自動運転というと、ただ車を自動的に動かせるようになるといった表面的な認識が多いが、こうした見方は改めた方がよい。自動運転車が本格的に社会に普及するようになると、車に対する認識そのものが変化し、社会インフラも再構築が迫られることになるかもしれない。重要なのは、自動運転技術がITインフラと密接に関係しているという点である。
トヨタ自動車が報道関係者に実演公開した「自動運転車」の車内=2015年10月、東京都内
トヨタ自動車が報道関係者に実演公開した「自動運転車」の車内=2015年10月、東京都内
 ほとんどの人は、車を所有することは当たり前のことだと思っている。だがよく考えてみると、車の所有は必然性に基づくものではない。多くの人が車を所有したがるのは、所有していないと、好きな時に車に乗れないからである。

 ところが実際に乗っている時間は全体の数%程度であり、ほとんどの時間は駐車場に停めたままになっている。もし車が自動運転に対応し、スマホなどのIT機器が人々の行動パターンを把握しているとしたらどうなるだろうか。

 例えばAさんは毎朝7時に郊外から中心部に車で通勤し、Bさんは8時に中心部にある自宅から、同じく中心部にある会社に車を使って移動している。この2人は、以前の社会ではまったく接点を持つことがなかったはずだ。ところがITのインフラが完備された現代社会では、この2人はネットのサービスを使って容易に結び付いていてしまう。

 つまり、毎月一定金額を払えば、自分が指定した時間に自動運転車に乗ることができるというサービスが実現可能であり、こうしたマッチング技術を使うと、何人もの人が1台の車をシェアできる。